中間ポーズで始まって中間ポーズで終わるのが良い、とフランスの映画監督のインタビューで読んだことがある。何気ない瞬間をスケッチの様にスピーディーに撮り、一つ一つのピースはバラバラに見えても後で繋げると、ああこういう事だったとわかる気がする。
こういうことを言いたかったのかと、視聴者が分かったような気になる。
この小説を読んで、それと同じ感慨を味わった。
一見状況も行動もバラバラで、そこに「物語性」で説明をつける事を拒むピースの群れ。
だが読んでいる途中から読者は肉体の温かさと皮膚の冷たさ、若者の焦りとあきらめ、中年たちもまた同様に持っている感覚を感じているはずだ。
納得し、説明できる物語性を伴うものが人生なのではない。
「あざ」のように自覚無く痕跡を残していくスケッチ。