第5話 観測の誘い

 こういう時、私が四人に飲み物を出すべきであろうが、私の部屋の飲み物を飲まれては発作に対応できなくなる。鳶雄が率先して台所からジュースを人数分持って来てくれた。

 まずは三人が自己紹介した。

「私は桂茜かつらあかね。梟町出身で、この中では鳶雄と一番長い付き合いです。」

 おさげの女の子は、鳶雄の幼馴染であるらしい。

 背の低い男の子は、新岡裕唆にいおかゆうさと名乗った。聞くに鳶雄の親友とのこと。

「わ、私は、西園寺秘未心さいおんじひみこ。と、鳶雄とは付き合いは、あ、浅い方…。」

 髪が長い女の子は、二年前に梟町にやって来た転校生だという。

 鳶雄たちが何に罪悪感を感じているかはわからないが、私はこんな小さな町でも仲間がいる鳶雄が羨ましかった。

「思えば私も自己紹介をしていませんでしたね。私は錆街颯武。東京の私立の、東京資源開発大学理学部地学・天文学科に通っている大学一年です」

 私はそれだけしか言わなかった。何かしてやれればいいのだが、昼間では何もできない。

 鳶雄が持って来たジュースを飲んでいるのは私だけだった。

「……」

 彼らの方から私を訪ねてきたのに、部屋に入って来て彼らは何も言おうとしない。何も行動しない。先にしびれを切らしたのは私だった。

「…で、要件とはなんですか?」

「俺たちは、颯武さんに謝らないといけない。酷いことをしたんです」

 鳶雄は震えた声でそう言った。

「全部言ってくれれば、何でも許しますよ。私も君たちを責めたりしませんし。後から愚痴を言うのはお互いになしにしましょう」

 緊張を解きたくてそう言った。肝心の鳶雄たちはそれでもあまり口を動かそうとしない。かえって怯えさせているのかもしれない。友好的に接することができない私の方にも非があるのかもしれない。

「こうしましょう」

 このままではここで膠着するだけだ。私はある提案をした。

「鳶雄君は大丈夫として。茜さん、裕唆君、秘未心さんは今日の夜、空いてますか?」

 何のようですか、と裕唆が聞いたので、

「この真庭の家で天体観測をしましょう。ちょうど今日は流星群なんですよ。望遠鏡は一つしかありませんが、みんなで共有すれば大した問題ではないでしょう」

 と答えた。

 私は一度三人を家に帰した。鳶雄も彼の部屋に戻した。そして夜を待った。

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