第6話 意地悪な子供
夏休み中は中学校で、プールで泳ぐことができる。というよりは指定された以上の時間、泳いでスタンプを押してもらって宿題クリア。体育の成績を下げないためにも行かなければいけないのだ。
「行ってくるぞ」
鳶雄は水泳バッグを持って元気よく家を出た。数分も歩けば中学校に着いた。
「おはよう、トビオ!」
アカネはいつも一番乗りだ。
「よう。ヒミコとユウサはまだか?」
いつものメンバーが集まるまで、校門で二人を待った。
「お、遅れたわ…」
ヒミコがやって来た。次にユウサも来た。合計四人。梟町に住む中学二年生はこれで全員である。
「ちょうど時間じゃねえか。さあ、早く更衣室に行こうぜ」
鳶雄たちはプールの方へ向かった。そして男子と女子の更衣室に分かれた。鳶雄はユウサと一緒に着替えた。
「この前から俺の家に来てる余所者がよ、めっちゃムカつくんだ。どうにかして追い出せねえかな?」
ユウサは、この前からどうしてそんなことを、と答えた。
「今まで家に泊まったことのある人はみんな、かなり友好的だった。でも今年泊まってるアイツは違う。誰とも話さないで優等生ぶって…」
それには事情があるんじゃないのか、とユウサは尋ねた。しかし鳶雄は、
「いいや! アイツにはそんなのない。絶対にかっこつけてるだけだ!」
鳶雄はそう言い切った。
プールサイドでもこの話題は続いた。
「トビオが言うならそうなんだ。あの人ねー」
アカネがプールに入りながら言った。
「で、でも。い、一応はお客として来てるんだし…。そ、それにこの前、発作起してしまったじゃない? あ、あれは私たちのせいよ…」
ヒミコは責任を感じていた。きっとアカネやユウサもだ。しかし鳶雄は真実を知っている。
「アレは演技だぜ。姉貴が朝、言ってたぞ」
昨日は鳶雄も驚いた。町の病院に行って、救急車が出動してないか確認したぐらいだ。しかし心配とは裏腹に、アイツはケロッとした顔で真庭の家に戻って来た。おまけに自分と遭遇したことをその日の夕食の時に、話題にすらしなかった。
それが鳶雄にはかえって不満だった。嫌ならはっきり言えばいいのに。
ユウサは、心配はして大事にならなかったのは安心だったけど、黙っているのは酷い、と言って一人で泳ぎだした。
「でさ。具体的にはどーするの?」
アカネが聞く。対して鳶雄は、まだ何をするか全く決めてなかった。
「とりあえず今日、アイツの部屋に近づいて何か苦手なことを聞き出す」
「そ、そんな古典的な…」
ヒミコが呆れている。
「とにかく、まずは情報収集だ! 明日、また四人で集まってその時に決めるぜ!」
鳶雄も泳ぎ始めた。今日は晴天で、絶好のプール日和であり、四人は終日泳いでは日光浴を繰り返した。
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