第4話:蔓延していく大志
「さて、今からどこに連れて行かれることやらね」
「なんか魚釣りじゃない気がしてきたわ」
俺たちは船の中にいる。
港に集合していた俺たちに一隻の大きな船がやってきて俺たちを乗せていった。
俺が思っていた以上のことを今日やるのかもしれないな。
「うう、なんか怖いです……」
「星海ちゃん、大丈夫よ。きっとサバイバルが始まるくらいだわ」
「それぜんぜん励ましにならないだろ……」
森野はだいぶと涙目になっている。
まあ誰もが予想しなかったことだろうから無理もないかもしれないな。
「てかカイト、今日はずいぶんおとなしいじゃないか」
「……」
ふと横を見てみるとカイトは顔面蒼白になっている。
「おい、もしかして風邪か?」
「……ちわるい」
「え、何だって?」
俺はカイトに耳元を近づける。
「気持ち悪いって言ってるんだよ!」
「わあああ!」
耳がキーンとする。こんな近距離で叫ぶなんてなんてえぐいやつなんだ。
「乗り物酔いかよ。デッキのほうに行って吐いてこいよ」
「そうさせてもらうよ……」
カイトはふらふらしながら外へと出て行った。
どうやら金持ちでも乗り物には勝てないようだな。かなり飯うまな状況だ。
「まあ俺も着くまで少し寝るかな」
船内にいても特にやることはない。そんなときは寝るに限るな。
「おやすみ、世界よ」
壮大な発言をしてから俺は夢の世界へといざなわれたのだった……。
「くん、教也くん……!」
「あれ、もう朝か……?」
「違うわ、ついに着いたんだって」
そうだった。確か船に乗っていて暇だったから寝てたんだ。
「こんにちは、世界よ」
「もう、そんなこといってないで外に行くわよ」
「ああ」
俺は春々に手を引かれて外へと出た。なんだか春々の手は熱かった。
「どこだ、ここは……?」
船から降りるとそこは何もない島だった。本当にヤシの木くらいしかない。
「まだ夢の中だったのか……」
「違うわ、現実よ」
春々は無言で俺のほっぺたを引っ張る。
「痛い痛い痛い! 自分でやるよ!」
「ごめんごめん」
「まったく……」
周りを見渡すと降りてきたクラスメイト達も不安そうにしている。
森野に至っては目に涙を浮かべている。
「本当、ここで何をするんだろうね?」
「なんだ、乗り物酔い王、復活していたのか」
「もうそんな安っぽい挑発には乗らんよ」
「乗り物酔いするからな」
「そんなにうまいこと言えてないからな」
しばらくカイトとしょうもない話をしていると先生が下りてきた。
「さて、今からすることを話すぞ」
パニックになっている人たちも静かになり先生の話に耳を傾けた。
「見ての通り、この島には何もない。あるのはヤシの木だけだ」
もしかしてホテルでもあるのかと思ったがやっぱりそうではないらしい。
「ここから一キロ先に島がある。そこに寝床も晩御飯も用意してある」
「一キロ先!?」
一同が一斉に声を上げる。確かに向こうのほうに島があるがそれでも遠い。
「そうだ。ここにカバンがある。中には役立つものが入っている。各班一つずつ渡すから十分に活用するように」
俺たちは先生からカバンを受け取った。中にはナイフやタコ糸などしか入っておらず、食料どころか飲料すら入っていない。
「先生、どうやって向こうの島まで行くんですか?」
俺は当然の質問を先生に投げかける。
「それはお前たちに任せる。それではこれで」
先生たちは俺たちが乗っていた船に乗り込むと出発してしまった。
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