第2話:大志の根源
「またお前とクラスが一緒かよ」
「そんなこと言わないの。春々だってそうおもっているんだから」
三年八組に俺と春々(るる)の声が響き渡る。今日から新学年となり、三年生となった俺は再び春々と同じクラスとなったのだ。
「これで何度目かしらね? 幼稚園からずっと同じクラスだった気がするわ」
「ああ、マジで十五年間ずっと同じクラスな気がするぜ……」
俺と春々は俗にいう幼馴染だ。
物心がついたときにはいつも横にいた。
高校はさすがに違うと思っていたが、何にも相談をしていないのにまさかの高校まで同じという運命力の高さだ。
「とか言って、教也くんは春々が同じクラスでうれしいんじゃないの?」
「……」
「ふふ、教也くんはわかりやすいんだから」
「うるせっ」
俺は図星をつかれて顔が火照った。
新しいクラスで知り合いがいると安心するものなのだ。
そんなやり取りをしていると教室の前のドアが音をたてて開いた。
「はい、こんにちはー」
「おはようございます」
初老の男性が荷物を腕に抱えて教檀についた。
どうやら彼が俺のクラスの担任のようだ。
「えー、今日から担任をする西山です。みんな、情熱さえあれば教師には絶対になれるからこの一年間、一緒に頑張ろうな」
「よろしくお願いします」
俺の第一印象は情熱的な先生という印象だった。
挨拶もそうだが、今この時代で丸メガネをかけているところも堅そうな先生の印象だ。
「じゃあさっそく班分けをするからこのくじから一人一枚引いてくれ」
ぞろぞろとクラスメイト達が教卓の前へと向かう。
俺も立ち上がり、そのくじを一枚右手でつかんだ。
その紙からは三番という紙が見えた。
「あ、教也くん、番号近いわね。私は四番よ」
「……嫌な予感」
「もー、なんでそんなこと言うのよー。」
紙を覗いてきた春々を俺は放置し、自分だけ席に座った。
正直なぜちょっと怒っていたかわからない。
「よし、じゃあ一から四、五から八のように上から四人班を作ってくれ」
先生の指示を受け俺たちは机を動かし班を作っていく。
というかよく考えたらこれはまた春々と同じ班なんじゃ……。
「教也くん、よろしくね」
「やっぱり同じ班……」
本当にいつまでこんなにも腐れ縁が続くんだろうか。
「全員班に分かれたか? じゃあまずは自己紹介をしてくれ」
先生の一言で各班ざわざわと自己紹介を始めていく。
ちなみに俺はこういう時いつも一番目に行くタイプだが……。
「なら僕から行かせてもらおうかな」
長髪の男がそう語る。どこかで見たことがあるような顔な気がする。
「こんにちは。僕のことは知っていると思うけど自己紹介しておくよ。僕はカイトというんだ」
カイトは長い髪をかき上げながらそう答える。
「もしかして、あの超お金持ちと噂のカイトくんかしら?」
「いかにも。その超お金持ちと噂のカイト様だよ」
「わぁー、初めて会ったわ! サインほしいわ!」
「ああ、いいとも」
カイトはすらすらと春々の筆箱にサインをする。
「そんなに有名なのか?」
「有名も何もこの学校の多くの寄付金はカイトくんから出てるって噂よ!」
「へー、そうなんだ」
対して興味がないので適当に返事をした。
最初の自己紹介からめんどくさそうな気がするし。
「なんだ、君は僕にケンカを売っているのか?」
「ケンカ? そんなの在庫切れだよ」
俺は冷静に切り返す。初対面早々だがあまりに態度が気に入らない。
「ふふ、在庫切れとは面白いね。ならばケンカの買取はいいのかね?」
「ああ、今なら二十パーセントアップして買い取ってやるよ」
俺たちの間に火花が散る。俺は立ち上がりカイトに近づこうとしたが
「もう、初日から何やってるの?」
「だって……」
「だっても何もないの! とにかく座る!」
「……はい」
春々はキレるととんでもないことになる。
それを知っている俺はこれ以上突っかからずに席へ座った。
なんとなくカイトにも通じたのか、奴もおとなしくなっていた。
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