参 雪月花奏
線香の匂いがする。
——懐かしい。
深く知った匂いではない。
何かの記憶。
景色は雪。月。花。
雪とは違う上へと昇る白い光。
視界はそれをただただ見送る。
目を覚ました時、俺は布団の中に居た。
倦怠感を感じつつも身体を起こし、辺りを見回す。建物の雰囲気からして隠遁神社からは出てはいないのだろう。
そういえば……あいつ、祭助は無事あの身体に戻れたのだろうか。
意識を失う前に黒九尾は儀式の下拵えとか言ってたな。まだ何かあんのか。結構面倒だな。
ふと指に違和感。見れば覚えのない絆創膏が巻かれていた。こんなとこ怪我したっけ。
とりあえずあの二人のいる部屋に戻ろう。
布団から出た時に気付く床板に置かれた線香。そういえばさっき見た夢でも線香の香りがしたような……。これのせいか。
なんか変な夢だったな。なんというか……あれ、どんな夢だっけ。よく見る夢だったという感想があるにはあるが。忘れた。
夢なんて思い出そうとすればする程、記憶からは消えそうになる。あやふやになっていく。
夢の内容を思い出そうとすることを止め、障子を開く。そこから見えるのは中庭。この小ささなら坪庭と言った方が良いだろうか。
苔を付けた岩に地面を埋め尽くす砂利。小さな紅葉の木。その葉が落ちる小池から流れる水は通路となっているししおどしの音を鳴らす。それら全てが、ここの静けさを感じさせた。
その景色は俺にとって、かなり好ましいものに感じた。静かな風景というのは良いものだ。
にしても広い。どこがさっきの部屋だ。完全に迷子だ。こんな場所を黒九尾は一人で管理しているのか。よくやるな。
しばらく歩いていると、ここに入る時に通ったであろう鳥居を見つけた。入ってくる時は無数のように並ぶ鳥居の下を通ったが、こちらから見ると大きな鳥居と一回り小さい鳥居の二つだけだ。
そして自然と目に入る鳥居の向こう側。山の下に存在する人気の無い村。ここに来るときに通った村という事には違いは無いだろう。
大きな影に飲み込まれているかのような曇天の下。それが村を村としての機能を停止させているように思わせる。
この神社の上は空高くちらほらと雲が顔を見せているが晴天だというのに。
村の向こう側は景色が濁り、確認できない。隠遁の地はあの場所までということか。
「目が覚めたか」
「うわッ」
いつのまに後ろにいたんだ。黒九尾は俺の驚いた様子に笑う。その笑い方は相変わらずジジくさい。
俺を探しに来たのだろうか。じゃあ、あの部屋でじっとしていたほうが良かったのかな。
結構ウロウロしてたし、手間になったかもしれない。
「呼びに行こうとしてた所じゃ。聖斗も祭助も待っておる」
黒九尾が回れ右をして尾が俺の顔に当たる。
邪魔だ。
「あいつ戻れたのか。あの本体って人間じゃないよな」
横たわっていた祭助の外観を頭に浮かべる。人間の子供に狐の耳と二本の尾を付けたような。
「あれは狐人。人の身体に妖狐を憑かせ身を保っているのじゃよ。祭助は生きても死んでもおらんのじゃ」
「もともとは人間だったという事か」
俺は憑かれた奴に憑かれてるって事か。何か変な感じだな。
「そういう事じゃ。さ、まだやる事が残っておる。なに、そんな嫌そうな顔をせんでも疲れることではない」
黒九尾が襖へと手を伸ばす。しかしその手が触れる直前に襖は勢いよく開かれ、何かが俺に激突した。そしてそのまま俺の身体は外へ投げ出される。
上手い事といっていいのか、俺の身体は枯れ葉が積まれた場所に落下する。その場にあった葉は一度宙に舞い、重力に従い俺と、激突してきた張本人——祭助の上に落ちてきた。
「なにすんだお前」
「おはよっ!」
とりあえず退いてくれないかな。祭助は俺の上にのしかかったまま満面の笑みを見せる。
元の身体に戻ってもこいつの性格は変わらないか。
「祭助や。奏の上から退いてやれ。それにまだすることは終わっとらんじゃろ」
「はーい。奏、早く終わらせようよ。おいらは早くあの羊羹食べたいの」
しぶしぶと言った様子で祭助は俺から離れる。俺も立ち上がり、服についた枯れ葉や砂ぼこりを落とす。
ほんとなんて事してくれるんだこいつは。
「はやくー!」
耳元で大きな声を出され頭がキーンとする。なんだこいつ。いままで以上にうるさいぞ。
「そんなでかい声出さなくても聞こえるから」
「奏遅いんだもん」
少しくらいゆっくりさせてくれ。そもそもお前が突進してこなければ、事を早く進められてたんだ。
「まるで兄弟のようですね」
祭助はまだ俺の服を早く早くと引っ張ってる。たしかによく見る兄弟の光景だな。こんなのが弟だったら毎日が喧しくて仕方が無いだろう。
祭助を含み、さっきの机を囲う。机の上には酒を飲む時に使われるような器が置かれ、その中には少し赤みのある透明の液体が入っていた。
わずかに香るアルコールの匂い。うん。間違いなく酒だ。
「俺未成年なんだけど」
「それは分かっておる。お前さんらの世では二十より下は酒は悪行らしいな。しかし盃を交わさねば成立せんのじゃ。我慢しとくれ」
今更そういうの気にしたって仕方が無いか。
これは神酒と呼ばれ、古くから伝わる酒らしい。これに互いの血を混ぜ、飲むことによって御霊の並存が成立すると黒九尾は言う。
この赤く濁ってるのは血かよ。なんか飲む気が失せそう。そんなことはできれば飲んだ後に言ってほしかった。いや、できれば知りたくなかった。
「奏が寝とる間に血は拝借したぞ」
「それで絆創膏が巻いてあったのか」
器を手に持ち、自分の口元へ寄せる。アルコールの香りが近くなったことでさっきよりもさらに嗅覚に刺激が来る。慣れない匂いのせいか、頭が揺れる感覚がした。
「奏くん。飲めそうですか?」
「……うん。正直血が混じってることに抵抗感じるけど」
俺は器を口元に寄せ傾けた。それを見た祭助もまた、同じように神酒を飲む。
神酒が喉を通り体内へ流れ込んでいく。口から摂取したものが通る場所だけでなく、脳へと、血管へと、指先へ足先へ、心臓へ、魂へ。俺の身体であるといえる全身に広がっていく。
「これで御霊の並存の儀式は完了した」
黒九尾はお疲れさんと俺と祭助の肩を叩く。
しかしあれだ。ダメだ。俺はどうやら酒に弱い体質だったらしい。
「気持ち悪っ……」
吐くとまでは行かないが、吐き気がする。今日で二度目の吐き気だ。一度目は吐いたけどな。
頭がぐわん揺れ、思わず頭を押さえる。あと喉が痛い。あんな微量でも人間はこんな事になる事もあるのか。
何が疲れるような事では無いだ。疲れ以上にきついものなんじゃないか。
あー、クラクラする。
「わぁかなで! 大丈夫?」
祭助は俺の元に駆け寄る。余裕か。何か俺よりいくつか年下の奴が余裕そうなのに俺がこんな状態になっていることに少々劣等感。
「あはは、乗り物にも酔ってお酒でも酔いますか」
「笑うなアホ」
こっちにとっては全くもって笑いごとじゃねぇんだよ。下手したら吐きそうなんだ。兎野さんがケラケラと笑いながらもコップ一杯の水を出してくれる。
不思議だ。感謝というものを感じない。
「あーそれと非常に言いにくいことなんですが……、帰りもあのバスですよ」
「え」
吐く自信しか無い。もう俺はダメージを食らってんだよ。間違いなく吐く。
「まぁゆっくりしててください。僕は祭助くんの羊羹をとってきますね」
そう言って兎野さんは部屋を出る。
酔いが醒めてもまた酔わないといけないのか。また吐くことになるのか……。自然とため息が出る。
「奏、これでお前さんは難なく霊喰術を使えるようになった。初めのうちは慣れず疲労するだろうが……」
あの時は完全に霊喰は俺の力ではなく祭助の力だった。
魂の中に住む曖昧な魂の鬼。その影響で俺は中途半端に霊喰術を使用することができていた。自我がある鬼だからこそ起こること。そう黒九尾は語る。
「あのさ、お前の言ってる戦うとか、俺を殺そうとしてるってのは誰の事?」
俺の質問に黒九尾は目を伏せる。
「名を言うのも腹立たしい……鳥天狗じゃよ」
鳥天狗? 天狗ならよく聞くけど鳥天狗はあんまり聞かないな。こいつといい天狗といい妖怪が関係してるのか。
「鳥天狗は神として災いから人を守るというのが役目だったんじゃ。しかしあやつは災いを己の力として取り込み、それを悪として利用し神としての道を外れた」
そいつは黒九尾と同様、人に術を与え自らの戦力にしているらしい。
それらは神憑きと呼ばれ、今現代でも姿を持って行動しているそうだ。
「そいつがなんで俺を狙うんだ」
「お前さんが雪女の血を引いておるからじゃよ」
「それが何か関係あんの。俺は普通にこれまで周りと変わらず生きてきたけど。それに鬼憑きとそう変わらないものだと思ってんだけど。兎野さんとどう違うんだ」
零風術を使ったのも暑い時や周りに悟られない程度に使ったぐらいだ。今知っている人物といえば兎野さんと黒九尾と祭助ぐらいだと思う。後は……もう居ないが父さんくらいか。
「言ったであろう。雪女の血を引くお前さんは奴等にとって脅威だと。雪女もまた、神の一人なのだからな」
「……初耳だな。父さんは雪女という事は教えてくれたけど、神とかは一言も言ってなかった」
「雪女が自分が神であることを話さなかったんじゃろう。そもそも雪女が神だなんて普通想像できんじゃろう。ほとんどの者は妖だと思っとるのではないか」
しかしそんなカミングアウトをいきなりされてもな。実感も沸かないし、異様なものをいくつも見せられた今となっては驚きもしないな。
「神同士の戦は大神より硬く禁じられておる。しかし奏は人間でありつつ零風術を受け継いだ。神を討てる術を持っているというわけじゃ」
それって向こうも俺に攻撃できるって事だよな。まぁそうじゃないと黒九尾も俺が狙われているって忠告しないか。
「そういえば、母さんってなんで死んだのか知ってるか」
「……さぁ、知らんな」
目を細めて逸らす。こいつは嘘が下手か。明らかに何か知っている風だ。
「別に隠そうとしなくても良い。父さんが言わなかったのにも理由があるって言いたいんだろ」
黒九尾から色々聞いたが分からないことがまだまだあるな。むしろ増えた気がする。
俺の知力や理解力がないというのもたしかだろうけど。
「できれば全てを知らずに終わればいいんだがな。知ることになるということは……」
意味ありげに黒九尾は呟く。しっかり聞き取れず聞き直そうとしたが、中断。黒九尾の顔を見て、なんとなく聞かないという選択をした。
きっと話を聞くのが面倒になってきてるのだろう。
校長の話以上に聞き疲れた気分だ。あれは適当に聞き流しているけど。
「祭助くん持ってきましたよ。どうぞ」
兎野さんの持ってきた羊羹に祭助は子供らしく喜ぶ。尾も喜んだ犬のように揺れ動いていた。若干飾りだろうかとも思っていたが、これを見る限り感覚は通っているみたいだ。
「美味しい! おいらこんなの食べたことないよ。かなではいつもこんな美味しいもの食べてたんだね」
一口食べて口角をにんまりと上げる祭助。
大袈裟な……。たしかにすごく美味しいけどそんなリアクションするほどか? 食べ物を食ったことないわけでもあるまいし。
こいつの生きてた時代がどんな食文化だったのかは知らないが。
「酔いはどうですか?」
あ、わりと大丈夫。いつのまにかさっきの変な頭痛が嘘のように引いている。水のおかげだろうか。
まぁどうせ吐くことになるんだろうけどな。
「では祭助くんが食べ終わって少ししてから出ましょうか。もう十八時ですしね」
「え、外そんな暗さには見えないんだけど」
「そりゃそうじゃ。ここは時が止まっておるからの。世の時は流れとるぞ」
全然時間が経った感覚が無い。あ、俺は寝てたからか。何時間寝てたんだ。
「バスあんの? あそこ通るのだいぶ少ないだろ」
「あー、そうですね。まぁそれについてはなんとかするんで」
なんとかできるもんなのか。タクシーでも呼んだのだろうか。リッチマンかよ。
祭助が羊羹を食べ終え、俺達は外に出る。
「奏、感謝するぞ。術を磨き強くなれ。戦の時は遠くない。鳥天狗はもう何年も前から動いておるからの」
そういえば黒九尾と同じやり方で戦力を集めているんだったな。じゃあ先週のあいつも鳥天狗の仲間なのかもしれない。なんでかすっかり忘れていた。
「どうした奏」
「いや、俺たぶん鳥天狗の仲間に会ってる。雪女とも言われたよ。異様な力も持ってたみたいだし、神憑きってやつなのかも」
黒九尾は深刻な表情を浮かべる。
「そうか……。隠遁の地に入る事でその力で奏の、神の匂いを隠そうと思ったおったのだが、顔を見られてしまったか。仕方がない。なるべく周りには警戒しておくれ。魔の手は鳥天狗の手だけでなく、それに憑かれた人なのだからな」
変なお面をかぶってたけどたしかにあいつも人間か。
あいつはまた会うとか言ってたしこっちが避けるにしても誰なのか分からないから不可能だ。
身を守る手段は多いに越した事は無い。なるべく早く霊喰術を駆使できるようにならないとな。
「では黒九尾さん。また来ますね」
「うむ。くれぐれも気を付けてな」
黒九尾に別れの挨拶を告げ大きな鳥居を潜る。そしてその鳥居に続く一回り小さな鳥居も続けて潜った。
——風が木を揺らす音と共に鈴の音が聞こえる。この鈴の音には何の意味があるのだろうか。
そういえば祭助の赤いリボンというのか紐というのか……。その中心にも鈴が付いている。
お守りみたいなものなのだろうか。
「うっわ。ほんとどういう原理なんだこれ」
「不思議ですよね。黒九尾さんはこうやって神社を隠してるんですよ」
「迷いの鳥居って言ってね。無関係の者は迎えないようにしてるんだってさ」
いつのまにか無数の鳥居がまた並んでいた。さっきまでは見えなかったのに。どんな原理してんだ。いや、原理なんてものも無いのか。
来た道を戻りトンネルを出た所まで辿り着く。ここでやっと元の世界に戻ってきた、という感じだ。
何もかもが異様だった。すでにとなりに異様な者を連れてしまっているが。
「さて、バスを待っててもあれですから少し面白いものをお見せしましょう」
なんだ。芸でもすんのかやめてくれ。反応に困る。
「祭助くんはこれくらいの高い所とか平気ですか?」
「この高さなら余裕だよ」
何の話してるんだ。
高さがあるといえばガードレールの向こうにある崖くらいだ。
「お先っ」
祭助はぴょんと軽やかにガードレールを飛び越え、姿を消した。
「あいつ飛んでったんたけど。狐人ってすごいな」
こんな高いところからでも飛べるのか。でもどこに遊びにいったんだ。さっそく勝手な行動しやがって⋯⋯。
「では行きましょう!」
「は?」
気づいた頃にはもう時すでに遅く——兎野さんにラリアットされつつ宙に浮いていた。なんかデジャブ。
デジャブもなにも今回は落下の高さが全く違う。
普段あまり大きな声は出さないが、この時はさすがに叫んだ。兎野さんは笑った。
「あいつ……殺す気かよ」
何も言わずのいきなり飛び降りるとか頭いかれてんのか。
数十メートルある場所を飛び降りるのに道ずれにされた俺だったが無事、不思議と砂埃の中、生きていた。目に沁みる。
兎野さんは上手く着地していたが、何故か俺は振り飛ばされ岩に激突。普通なら死ぬか頭蓋骨が割れるかだが、割れていたのは岩の方だった。俺ってこんな石頭だったっけ。
でも自転車で転んで頭から血を流した記憶もある。すぐに治ったけど。
「うまく守が使えたようですね。防衛本能でしょうか?」
「もり? なんだそれ」
「想像なんてできないかもしれませんが、鬼憑きあのような特殊な能力だけでは無く、人外的な身体能力の向上というのもあるんですよ」
いくら身体能力が高くなったからといってあんな所から飛び降りるという概念があるとか……チャレンジャーな人だな。
普通思いつかないだろ。
「それともう一つ。その場にある見えないものの力を利用して行う攻守。それぞれはそれらを音読みしただけのものですよ。先ほど奏くんが守を使えたのは命の危機というのを身体が感じ取ったからでしょう」
そういえばトンネルで兎野さんが見せたものも術者なら誰でもできるとか言ってたっけ。あれが攻ってやつということか。
鬼憑きにある基本能力みたいなものということなのか。
「こんなおまけもつけてくれるとは黒九尾は変なサービス精神の持ち主だな」
「うーん。たぶん、こうしなくては術者の身体が技や技の反動に耐えられないからではないかと。実際、奏くんも霊喰術を使った時の疲労感は重度のものだったのでしょう?」
「あー、そういうことか」
たしかにそれなら辻褄が合うな。
兎野さんは感が良いのだろうか。話し方からして黒九尾から直接聞いたというわけでは無さそうだし。
「良かった! かなで生きてた!」
草原の中から全身葉っぱまみれの祭助が姿を現す。
「心臓は止まると思ったけどな」
「ビビり」
「あんなのされたら誰でもなる」
こいつはいったいどこにどんな落ち方したんだ。俺も砂埃まみれではあるが。
「ここまで降りればバスは少なくないですよ。ほら土埃を落とさないと変に見られますよ」
降りたんじゃなくて落ちただろ。それに土埃はお前が飛ばしたからだ。
「そんな顔ばかりしてると眉間に皺が残っちゃいますよー。……おや、奏くん、さっそく練習といけそうですよ」
兎野さんの視線の先に目をやると二階建てのレトロな家が建っていた。
時間もあって暗いからしっかり確認はできないが明らかに管理されていない。雨風で風化した様子が見られ、暗く重々しい空気を漂わせている。
「たしかここはご老人が変死された、とかで有名になった場所ですね」
知ってるってことはこいつわざとここに落ちたな。偶然じゃないだろ。
「なんで老人がこんなところにすんでんだよ」
「人間嫌いなお方だったとか? 確かなことはさっぱりです」
こんなとこに家を建てて住むとか明らかに人を避けているのは確かだろう。しかし不便なことも多かっただろう。
その家に入ると同時に身体にかかる重圧が強くなる。この家に入るな、と。
この家に居る何かの拒絶。それが俺達を追い返そうとしているようだ。居心地が悪い。
「物の怪の匂いがする」
「なにそれ」
「トンネルにいたアレですよ」
あぁ。あれか。正直見たくないけど身を守る術は使えるようになっときたいしな。
それにこれからいくらでも出てくるかもしれない。見慣れておく必要もあるだろう。
「奏くん。細心の注意、警戒をしてくださいね。どこからくるかも分からないので」
「警戒しろと言われても警戒したところでどう対処すればいいんだよ」
「まぁ、本当に大変なことになったら僕が何とかしますよ」
にっこりと笑った顔で兎野さんは言う。
納得できる言葉ではないが不思議と信頼感が持てる、ような気がした。
「まぁ、とりあえず。霊喰術の使い方からですね。一度使ったことはあるんですよね?」
「まぁな」
「じゃあ術の始は大丈夫そうですね。問題は……」
力の調節だな。あの時振り回されたのは完全に俺の鬼術となっていなかったからだと黒九尾は言っていた。それが確かなら扱えるようになっているはずだが……。
「おいらも軽くは使えるらしいからおいらが実践して見せたほうがいいよね。まず、頭に形を創造する」
祭助は掌をぐっと握った後、ゆっくりと軽く開いて見せた。そこにできたわずかな空間からは影のようなものが煙のように現れ、ゆらゆらと蠢く。
そしてそれは祭助の意志で様々な形へと変わった。
「形は変わっても力の内容は変わらないよ。こういう死んだ魂が集まる場所だったら、力を思う存分発揮できるけど、ねっ」
祭助が床に向かって何かを投げるような動作をすると、そこには小さな穴が開いた。
「おいらの力じゃこんくらいしかできないけど、かなでならもっとでっかく使えると思うよ」
「なるほどな……。零風と使い方はなんとなく似てるのか」
頭の中で創造か。創造するといってもどう創造すればいいんだ。喰というのだから牙とかのイメージがあるが……。まぁ、最初は祭助と同じようにするのが妥当だよな。
祭助と同じように手を握り、手の上に形創る。予定では祭助と同じように投げようと思ったのだが、瞬く間にそれは巨大化し、暴れまわった。
「あわわわっ! かなで、抑えて抑えて!」
「やり方知らねぇよ」
霊喰はそこにいる霊を喰らい力へ変換する術。自由にさせておけば行く先にある霊を喰らい続け、膨張していく。
なんとかして抑えようとするが全くダメだ。俺が放った霊喰は家のあちこちにぶつかり破壊行動を続ける。むしろあの時みたいに俺のほうが振り回されそうだ。身体が引っ張られる。
「わっとと……」
おいおい、これ物の怪をどうにかする前に家が壊れるんじゃねぇのか。
「焦っては逆効果ですよ。一旦視界を無にして落ち着いてみましょう」
兎野さんに目元を覆われ、目の前が真っ暗になる。言われた通り一度、軽く深呼吸をして自分を落ち着かせた。
それと同時に破壊音も止む。あれの動きが止まったのか、腕が引っ張られる感覚も無くなった。
手が退けられ、辺りを確認する。霊喰は消えたようだ。
「うの兄ちゃんすごいなぁ」
「なんで止め方分かったんだ」
「分かったも何も、術は感情に大きく左右されるんで。慣れた零風では感じにくいかもしれませんが、そんなもんなんですよ」
「いや、そうじゃなくて……まぁいいや」
慣れるまで時間が掛かりそだな。あんなん使えるようになるだろうか。不安だ。
「奏くんならすぐに出来るようになりますよ」
「何を根拠に言ってんだ」
家のさらに奥へ進む。進むにつれて壁や床にある何かを引きずったような跡が多くなる。そして拒絶による重圧も重くなっていくように感じた。
「うー、やっぱこの空気あんまり好きじゃないなぁ」
こんな薄気味悪い所、好きなやつなんて居ないだろ。変な臭いもするしな。いや、ほんと⋯⋯。
「くっさ! なんでこんな異臭すんだ」
「物の怪というのは人間の肉体が物の怪へと化していくものもありますからね。栄養とかは一切取らないので、腐敗してるのでしょう。トンネルにいたものは念や言霊が集まってできたものだったのでそんな匂いは無かったと思いますが」
「あのトンネル自体異臭がしたから分からねぇよ、うわドア壊れた」
開けた途端、ドア枠が緩くなっていたのか簡単に外れてしまった。
「あーあ、かなでこの家の至るところ破壊してるねぇ」
「わざとじゃねぇ」
ドアをそのままそこに倒し、部屋に入る。
外の光もここまでは全く届かないらしい。どんな部屋なのか、
異臭がさらに強くなる。確実にこの部屋に物の怪がいる。多くの小さな気配と、大きなどす黒い気配。
——ベチャリ。
足元から妙な音がした。数か所歩く感覚も今までとは違う。まるで水のあるところを踏んでいるようだ。
ズル、ズルリ。
何かを引きずる音。うめき声。かなり近い場所で聞こえる気がする。
「ゥウ゛ぅ⋯⋯カ、ラ……ス、カカカカカカカカ」
「うわッ!」
あっぶな……。何かが顔をかすれる。物の怪が攻撃を仕掛けてきたのか。なんとかモロにくらわず、避けることができたがよく見えないな。
物の怪は気味の悪い声をあげ、まだズルズルと音を立てて部屋の中を動き回っている。
見えないが、意識を集中させれば風の変化で位置や動きがなんとなく分かる。確実とは言えないが。音と風だけを頼りにって、初戦から難易度高すぎだろ。
「いやー、真っ暗で何にも見えませんね」
「馬鹿、兎野さん危なっ……」
物の怪が兎野さんに襲い掛かろうとしていた。咄嗟の勢いで氷柱を出して物の怪にぶち当てる。
「キぇアぁぁぁぁァァァアアッッ」
うるさっ!
鼓膜が破れそうなほどに大きな声を物の怪はあげる。近距離で聞いた兎野さんは平気なのだろうか。しかし兎野さんに当たらずに済んで良かった。
いや、でもこの人は⋯⋯。
「お見事です奏くん」
「わざと避けなかったのか」
「ふふ、なんのことでしょうか。お見事的中、ですが」
分かってる。今は霊喰術を使うべきだったって言いたいんだろ。
といっても右利きが左手を使おうとするようなもの、というか。反射的には使い慣れたものの方を使ってしまうものだろう。
まずはこの暗さをどうにかしたいものだ。
……この方法なら今の俺でもできるか。いや、でもその後がどうなるかが心配だ。
迷ってても仕方がないな。
「え、かなで何してんの」
「さっきと同じこと」
握った拳の指の隙間からは僅かに霊喰が姿を現している。解放しろと言わんばかりに握る手を内側から押してくる。
「こんくらいで十分か」
俺は上に向かって霊喰を解放した。それは天井を喰らい、バキバキと音を立てて大きな穴を開ける。そしてそのまま一直線に空へと消えていった。
開いた穴からの月の光が差し込む。
「うっわ、酷い部屋だな」
明るくなった事で部屋の様子がよく見えるようになっていた。
歩いていて変な音がしたのは水のせいだと思っていたが……。全て、血のようだ。
部屋のそこら中には内臓を食い漁られたかのような動物の死体が転がっている。中には標本のように釘で壁に引っ掛けられている死体も数匹。
それも綺麗に掛けられているわけでは無く、数か所に深い刺し跡が見られる。生きたまま標本にしようとしたって事か。
それら死体全て、腐り、蛆虫が湧いていた。見るに堪えない姿だ。
趣味の悪い奴だな。そりゃこんな所に住むことになるだろう。
気持ち悪い。この二人はよく平然としていられるもんだ。慣れてんのか?
なんでこんな短い間にグロいもん何度も見ないといけないんだよ。あのお面男の時に比べればマシなものかもしれないが。
「あ、アガ……。カラ、ス」
物の怪が身体を起こす。月の光のおかげで姿がよく見える。
四足歩行の人間の身体に獣の手足が曖昧につけられている。その何ヶ所かは未成長のように短い。その中には人間の腕も混じっているようだ。背中からは羽のようにも見える巨大化した背骨が剥き出しになって、姿を現していた。
常識的に考えてありえないが、ここ最近のことで常識など当てにならないことを実感させられてんだ。
足元から霊喰が浮き出す。できるとは思わなかったが、そこに霊がいれば変換は可能らしいな。
「おぉっ、出来てるじゃん奏」
今度は上手くいきそうだ。暴れることなく、俺の近くに霊喰は滞在している。形も大きさも創造した通り。いける。
俺が攻撃しようとしている事に気付いたのか、物の怪はこちらへ顔を向ける。生える一本の腕が振り下ろされると同時に俺も霊喰を放った。
——喰らえ。
霊喰は蛇のような動きで物の怪へと向かう。そして俺に攻撃しようとしていた腕諸共、大きな牙で喰らい付き纏わりついた。
物の怪は喰らい付かれても尚、霊喰の口の中でもがき続ける。だが、何度にも亙る咀嚼により、動きは小さくなっていった。そしてうめき声を上げながら消滅していく。
不思議だ。身体の一部では無いのに感覚がじんわりと伝わってくる。
物の怪からは白い小さな光が浮かび、ふわふわと天へと昇る。まるで雪の粒が昇るように。
あれは人の魂だ。直感的にそう思った。
——黄泉へと送りましょう。
透き通るような女の声が聞こえた気がした。俺の知らない声だ。
兎野さんの声でも祭助の声でもない。
「⋯⋯さっきの声は」
「飲み込みが速いね。早すぎるくらい」
「最初は集中しないとやりにくいでしょうけど、慣れると手足のように動かしやすくなりますよ」
⋯⋯気のせいだったのだろうか。
物の怪が消えた事で、拒絶の力も無くなり一気に肩の荷が下りたというか、どっと疲れがきた。座りたいが、こんな汚いところでは座れないな。
「あの時ほどじゃないけど。やっぱり身体への負担は変わらないか」
「立ってることができるから予想よりはマシだよー。ぶっ倒れると思ったもん」
不安ではあったがなんとかなったか。祭助の言葉からして自分が思っているよりも早くは取得できそうだ。
⋯⋯しかし、あんなものでも元々は人間だったんだな。
「物の怪は人間には戻れないのか」
「ええ。動いているとはいえ、死人であることは変わりませんから」
「なんで物の怪になんの」
「物の怪が生まれるのは負の念によるもの。例えば、あの物の怪は動物の恨みがご老人を黄泉に送らせなかった。死んでも尚、魂は死体に残り続けた」
恨む心が負の念ってことか⋯⋯。あのトンネルにいたのは言霊によるものだとか言ってたな。
そんなものだけでも物の怪は生まれてしまう。どれもこれも人間が生み出してしまうものだ。
「しかし人間の生涯してきた事は簡単には消えません。惨殺行為は物の怪となっても続いた。負の念しかない物の怪はそれしか考えられないんですよ。この家にあった拒絶は、物の怪とは別の負の念がない老人の魂によるものでしょう。ここに来てはいけない、と。物の怪というのは普通、狭間にいくんですがね。⋯⋯何がともあれ、お疲れ様です奏くん。よくできました」
そう言って兎野さんが俺の頭にポンと手を置いて撫でてきた。……そういえば、父さんもよく俺の頭を撫でてきたな。懐かしい。
って何考えてんだ。俺は。
「……子ども扱いするな」
「あっはは、僕にとってはまだまだ子供ですよ」
「撫でるのをやめろ!」
振り払ったところでやっと俺の頭から手を放してくれた。たしかに兎野さんからしたら俺は年下だし子供だが。だからといって子供扱いされるのは癪に障る。
しかし少しの間、思いにふけってしまったな。不自然に見られただろうか。何というか、小恥ずかしい……。
「かなででも照れることあるんだ」
「照れてねぇよこアホ」
「奏って誤魔化す時少し声荒げるよね」
その話はもう終わらせろよ。もういいだろ。
俺の嫌そうな顔に祭助はケラケラと笑う。
「お前のほうが子供だろ……ん?」
後ろに目が付いている訳では無いが、何となく後ろにあるクローゼットが動いた気がした。まさかこんな汚いところのクローゼットに入る奴なんて居ないだろうし、勘違いだろうか。
「どしたの」
「物の怪ってさっきのやつだけなんだよな?」
「うん。物の怪の気配はもう無いし、間違いないよ」
じゃあやっぱ気のせいか。俺が何か所か壊したから立て付けが悪くなって、軋んだ音が鳴っただけなのだろう。
もうこの家からは出ようと部屋の出口へ向かおうとした時。先程揺れたクローゼットの扉が勢いよく開かれた。
「やぁああっと出れたわー! あのオバケちゃんを倒してくれたのはアナタね。ありがと♡」
「うぐっう」
なんだこのでかい特徴的な話し方の男は。突然抱きつかれ身体が傾いたが、勢いだけで不思議と重さは感じなかった。
「あの、貴方は?」
兎野さん質問する前にこの人を退けてくれ。
「アラ、イイ男じゃないの。アタシはミントっていうの」
「ミントさんですか。何故ここに?」
兎野さんはなんでこんな変人と普通に会話ができるんだ。
「ヤダ~、そんなにアタシのコト知りたいの? アタシ生きてた時の記憶があんまり無いの。死んだ理由もさっぱり、それでフラフラしてたらちょっと迷い込んじゃっただけなのよ。それで」
「その前に放してくれませんか」
ごめんなさいと言ってミントさんとやらは俺から離れる。ふわりと重力を感じない動き。もしやと思い足元を見ると見事的中。足元は透き通っていた。
「さっき抱き着いて思ったんだけどアナタ細すぎるんじゃないの?」
「物の怪では無いのか」
「アラヤダ無視されちゃった。あんなケダモノと一緒にしないでちょうだい。アタシはただの幽霊。ゴーストよ」
「物の怪は負の思いを残した魂がなるものですが、ミントさんは何か心残りがあるだけの純粋な幽霊のようですね」
純粋って何だっけ。でもなんでこんなクローゼットの中に隠れてたんだ。クローゼットにおい心残りでもあるのか。
「幽霊のお兄ちゃん」
「ケモミミの可愛い坊や、アタシのことはお姉さんと呼びなさい」
「お、お姉さんはなんであんなところに隠れてたの?」
びびってんじゃねぇか。
「ここに入ったのは何か身体が引っ張られたのよ。掃除機に吸い込まれるみたいにぴゅーっと。そしたら気味の悪いおうちだこと。耐えられずクローゼットの中に隠れていたのよ」
物の怪の存在するところは霊とかそういう類のものを呼びやすいらしい。ミントさんはそれの被害者のようなものというわけか。
「アタシを目で確認できる人がいるなんて嬉しいわ。みんなアタシを見たらビックリして逃げちゃうから。霊能者さんか何かなのかしら?」
「まぁ、似たようなものだと思ってください。ミントさんはこれからどうするんですか?」
兎野さんの問いにミントさんは悩むように顎に手を当てた。
「成仏はできないのか」
「できたらここには居ないわよ」
確かにそうか。でも過去の記憶を戻さないと難しいんじゃないのか。何が未練なのかも分からないんだろ。
「もしかしてアタシのコト心配してくれてるの? いいのよ、地道に探すから。ここから出してくれただけでもすごくありがたいんだから。何かお礼をさせてちょうだい」
いや、たまたまそこにミントさんが居ただけだったし。別にそういうのはいらない。
「奏くん、ミントさんは零体の身。移動が自由の身であれば物の怪や何かの異変に気付くことがあつかもしれません。何かあれば教えてもらうのはどうでしょう」
異変って黒九尾の言っていたあれに関係することか。
「じゃあそれで。できたらでいい」
「オッケーよ、奏ちゃん」
気持ち悪い呼び方はやめてもらいたいな。
「それで素敵な青髪のアナタの名前は?」
「兎野 聖斗です」
「おいら祭す」
「そう、聖斗さんね。アナタの名前もとても素敵」
兎野さんのことはさん付けかよ。祭助スルーされてんじゃねぇか。
祭助は悔しいのか悲しいのか俺のズボンを強く掴み、頬を膨らませ震えている。
「じゃあお先失礼するわね。何かあったらまた会いに行くわ」
ミントさんは慣れたように空へと飛んでいった。死んだ人なのに随分と元気な人だったな。だいぶ変わり者だったけど。
「さて、僕達も帰りましょうか」
「はぁ……」
行きよりは短かったがやっぱ乗り物に乗ると吐き気が⋯⋯。
兎野さんが家まで介護しようかと言ってきたが、さすがにそこまで世話になるわけにもいかないし、言い方に悪意を感じたため断った。
「目が死んでるよかなで。あ、いつものことかぁ」
「うるせぇよ」
何とか家まで辿り着き、ポストの中のものを取ってから家の中に入る。
腹を空かせていたのかクツシタが扉の前にちょこんと丁寧に座っていた。
「あ、お前ら喧嘩とかすんなよ」
「おいら自我は人間だから大丈夫だよ」
「クツシタのほうは……大丈夫そうだな」
クツシタの飯を入れた後、手紙を確認する。その中に宛名も送り主も書かれていない封筒が一枚。
「またこれか」
父さんが死んでから頻繁に送ってこられるようになった封筒。中にある文はまるで俺の事を監視しているかのような文が書かれている。
今回とどいた封筒の中の紙には、帰りが遅い。と書かれていた。たしかに今日は普段よりは遅くなったが……。この内容、入れてから間が無いという事か。
「なにそれ?」
「気にすんな。ただの変人からの手紙だ」
いつものようにその手紙を捨てる。たしか最初の手紙には銀行のクレジットカードとそれのパスワードらしきものが書かれていたんだっけ。もちろんそんな怪しいものは使っていない。
そうだ送り主が近くに居るなら返そう。
そう思って外に出る。しかし、辺りは静まり返っていて人の気配がまるで無かった。
「ほんと誰だよこんなことする奴」
「居たの?」
「いや、居なかった」
戻ると祭助はクツシタのことを抱き上げて椅子に座っていた。この短時間で何があった。
「もらったんなら使えばいいのに」
「こんな気持ち悪いもの使えるかよ」
カードを元の場所に片付ける。いつか姿を現す時は来るだろう。その時に返せば良いか。
⋯⋯さてと。今日からこいつと二人ぐらしか。まぁ、一人も二人もそう変わらないだろう。服は俺が小さい時に使っていた服を使ってもらえばいいし。
「かなでぇ」
「なに」
「よろしくね!」
祭助はにっと無邪気な笑顔を見せる。釣られて俺の口角も少し緩んだ。今まで以上に喧しくなりそうだが。少し期待感もある。
「あぁ、よろしく」
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