第30話終章 1

 昔々、アーベルという騎士がおりました。


 魔術師によって、人も動物も光になって消滅する呪いがかけられた国を救うため、彼は闇の魔術を求めました。

 そして賢者がいるという聖なる山へ登ったアーベルは、様々な苦難を乗り越えます。


 自分の心の闇を暴かれ、闇による恐怖と戦ったのは、国で待つ家族や愛する人々への思いがあったからでした。

 しかし全ての試練を通過したアーベルは、最後の決断を迫られました。


 闇は死に通じる力。

 使えばかならずアーベルは死んでしまうのです。


 けれど彼は迷いませんでした。

 アーベルは、自分の命と引き替えに呼び出した闇で、光の呪いを打ち払いました。

 彼は英雄と讃えられました。

 その姿を目の当たりにした人々によって、アーベルの偉業は語り継がれるようになったのです。



 それから数百年ほど過ぎた頃。

 レーヴェンスという国が、隣の国に侵略されようとしていました。

 第一王子はある娘の協力を得て、闇の術を得る事ができました。

 王子と娘は、戦場で闇を呼び出しました。

 王子を中心に地からわき出した闇は、二人を覆い、そして炎妖王の術を操る魔術師と炎の柱を覆っていきます。

 やがて闇が消失した後、幻だったかのように炎は消え、巻き込まれた者達は皆倒れていました。

 最大の盾であり武器でもあった魔術師を失って、敵国の兵は逃げてゆきます。

 そして闇を呼び出す代償に命を捧げた王子と娘は――。

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