第10話

 着陸中は⋯⋯





 何もなく普通に着陸した。

 すると管制官がすぐ近くまで来て、

「お金」

「いくらでしたっけ?」

「306万」

「400万じゃダメですか?」

 キョトンとしている。そりゃそうだよな⋯⋯。

「⋯⋯ホントニイイノ?」

 カタコトになってるよ!

「キリのいい数字の方がいいので」

「⋯⋯ソッチノワカイヒトイル?」

 あれ?なんでこの人「お金」と「306万」だけはっきりと言えてるんだ?


 何故かあの若い方は手でバッテンを作っている。

 どんだけ話したくないんだよ⋯⋯

「とりあえず、降りていいですか?」

 すると若い方は手で丸を作った。

 ありえないとは思ったが⋯⋯

「あの⋯⋯耳が聞こえないんですか?」

 バツを作る。

「じゃあなんで話さないんですか?」

 謎の行動を取り始めた。

「こ・と・ば・を・は・な・す・こ・と・が・き・ら・い」

 彼なりの手話だったらしい・・・?

 すると彼はホワイトボードを取り出し・・・

『こっちの方が楽』

「だったらそっちを早く使えや!」

『別に良くない?』

 めんどくさくなった俺は飛行機を降りたのだが⋯⋯

「君、面白いね〜雇ってあげる」

「お嬢様、わたくしはどうなるのでしょうか?」

「もちろん、クビよ?」

 うわ〜めっちゃ気分屋じゃん。

 しかも外国でクビ宣告とか最悪じゃん。

「わたくし⋯⋯どうやって生きてけば⋯⋯」

「嘘だけど」

「さっきの目はガチだった!」

「だって、本気で思ってたもん」

 なんじゃそりゃ。

 全く意味がわからない。

 考えが変わりやすい⋯⋯

「よ、良かった⋯⋯」

 つい、なんか良かったね。と思ってしまった。

「とりあえず観光地を貸し切ってちょうだい」

「かしこまりました」

 え?今なんて言った?「貸し切る」とかって言わなかった?

『車の準備が出来ました』

「お前はいい加減話せ!」

『断る!』

「ならせめて共通の手話にしろ!」

『やだ。どうせ、わかんないじゃん』

 何こいつ、タメ口なの?

 これでずっと行くの?

 いつになったら話すの?

 執事なの?

 と色々と疑問が出たが、それを言っていてもらちがあかない。

「お嬢様、参りましょう」

「分かったわ」

 まさかこんなに忙しいたびになるなんて⋯⋯

 この時の俺は知らなかった。

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