第8話

「全く許可がおりないわね⋯⋯」

「分かるのか?」

「私が免許持ってるって言ったよね?」

「だからか」

「そう」

 それから1時間後、

「早く離陸しなさいよ!」

「お嬢様、飛行機ではなくヘリで行きましょうか?」

「そっちの方が早いならそっちにして」

「かしこまりました」

 ちょっと待てよ⋯⋯確かヘリって⋯⋯

「あの!」

「何でしょうか」

「海外にヘリで行くのは無理があるんじゃ⋯⋯」

「そうですね」

「じゃあどうする気です?」

「海上で給油する準備は出来ております」

「だったら船で行けばいいんじゃ⋯⋯」

「私が免許持ってないんです。」

「それだけですか?」

「私はお嬢様の執事ですから」

 なるほど、それなら仕方ないか⋯⋯ん?仕方ないのか?

「許可おりましたね」

「よし、いこう!」

「お嬢様、ベルト締めてください」

「分かってるわよ」

 そして、俺達は海外に向けて飛行機を飛ばした。

 その途中で撃墜されそうにはなったものの、お金と権力で何とかしたらしい⋯⋯。

「ちょっとシャワー浴びてくる」

「は、はい?」

 この飛行機、シャワー付いてんの?

「あの、執事さん?」

「この飛行機の貨物室にタンクを積んでるんです」

「それ、大丈夫なんすか?」

「ちゃんと加圧してますから大丈夫ですよ?」

「じゃあ、荷物は⋯⋯?」

「目の前に縛り付けてありますが?」

 確かにベルトで縛り付けてある。これっていいのか?

「じゃあ、水ってそんなに沢山⋯⋯?」

「って言っても100リットルくらいですよ?」

「それってシャワーなら足りないんじゃ⋯⋯?」

「だから常時使った水をろ過して使ってますよ?」

「なるほど」

 プールも大体そうだもんな⋯⋯

「お飲み物いりますか?」

「自分でやるんで大丈夫です」

「いえ、今はオートパイロット使ってますから」

「は、はぁ」

 そんなものが小型機にまでついてるのか?

「どうぞ」

「ありがとうございます」

 美味しい紅茶だった。

「なんの茶葉がわかりますか?」

「えっ?」

 分かるわけないじゃん。今までまともに紅茶を飲んだことがない人間だし。緑茶とりんごジュースくらいしか飲んだことないし。

「まぁ、難しいでしょうね」

「アールグレイとか⋯⋯?」

「ご名答です」

 適当に言ったら当たってた。

「さすがお嬢様の旦那様です」

「は?」

「え?」

「ん?」

 急に機体が揺れた。

「ふぎゃ!」

「は〜さっぱりした〜」

 ここでなんとなく分かっただろう。お約束である。

 何故か彼女は部屋着っぽいものを着ていた。

「何してんの⋯⋯?」

 今の俺たちの体勢は

 ――ご想像の通りです。

「まさか⋯⋯!」

「違うぞ!どこかの小説と勘違いするなよ!?」

「それじゃあ、言い訳を聞かせてね?」

「わたくしはちょっとコックピットに戻らなければならないので⋯⋯」

「オートパイロットつけてきてるのよね?」

 バレてる。さすが免許持ってるだけのことはある。

 俺たちは長い言い訳を続けることになるのであった。

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