第6話

「着きました」

 そこは普通の家とは違った。自治体が運営しているような体育館みたいな広さの家だった。しかもリビングだけでだ。

「こっち」

 彼女に俺はついて行った。

 そして、俺は再び驚くことになる。

 彼女の部屋はウサギのぬいぐるみがあちこちにあった。

「なにこれ⋯⋯?」

「えっと〜そっちが〜」と彼女は名前を言っている。

「名前はいいから」

「せっかく紹介してたのに〜」

 小学生かよ!

 これは誰もが思うだろう。

「お嬢様」

「そこに置いといて」

「かしこまりました」

「名前、聞かなかったバツで取ってきて」

「それくらいならいいけどよ⋯⋯」

 扉がなかった。

「あれ⋯⋯?」

「はーやーくー」

「扉がないんだけど⋯⋯?」

「喉が渇いたから早くしてよ〜!」

「だから扉が⋯⋯!」

「そこにあるじゃん」

「は?」

 見渡す限り壁である。

「そこだって。そこ」

「だからどこだよ⋯⋯」

「ここだって」

 彼女は本棚の本を数冊移動させた。

「これでそこのスイッチ押して」

 電気がついただけだった。

「あかないんだけど⋯⋯?」

「あれ?」

「俺たち、閉じ込められてないよな?」

「確か⋯⋯ここをこうして⋯⋯」

 人の話を聞かない彼女である。

「開いた!」

「ようやくか」

「紅茶、冷めちゃった⋯⋯」

「俺、冷めても大丈夫だぞ?」

「新しいの持ってきてもらうね」

 やっぱり人の話を聞かない。

「お嬢様、そのポットの中身はちゃんと暖かい状態ですので大丈夫です!」

 下の階から声が聞こえた。

「それはどこにあるの!」

「台の上にあります!」

「これじゃないか?」

 これ、茶葉じゃん。隣にはお湯もあった。

「もしかして⋯⋯」

「元々入ってなかったんだな」

「じゃあ、入れようか」

「あぁ、頼む」

 なんかとんでもない日々になっていっている。

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