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 前回に続き、作品の特徴ピックアップです。


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2.敵が無能

 敵は警察、教師、両親ですが、ことごとく無能です。

 まず警察。実は主人公たちの仲間が1人、誘拐されるんですが、主人公たちが指示して出させた(!)人質からの手紙が平仮名オンリーで文節区切りもメチャクチャなのに、疑い一つ持ちません。

 そもそも、中学生が籠城していることがマスコミに漏れてるのに、野次馬や加担勢力(そんな奴らは出てきませんが)封じの見張りすら立てません。おかげで主人公たちは外の女生徒とトランシーバーで連絡取り放題です。連絡で仕入れた情報を説得に来た教師にポロリしても、気がつきゃしません。

 次はその教師。保身とゴマすり、暴力行為しかしないダメ大人として描かれています。まあ敵の中では一番できることが少ないのですが、主人公たちの憎しみと嘲弄は彼らが一身に浴びるという理不尽さ。可哀想です。人質救出のため、犯人の隠れ家捜索に動いた女子生徒20人(もちろん親の付き添いなし)を一人も見つけられないんだから、やっぱり無能としか言えませんが。探して補導しろよ、学区外だぞ、そこ。

 最後は両親。計画にも子供の雰囲気の変化にも誰一人気づかなかったダメな人たち。もちろん有効な手立てなんか思い浮かぶはずもなく、右往左往して嘆くだけです。せめて毎日廃工場まで来て説得を続ければ、転ぶ奴も出たかもしれないのに。

 それどころか、かつての青春時代を思い出し、の夢が蘇ったかのようなことを口走る父親まで出る始末。まとまるはずがありません。

 敵、すなわち大人たちですが、味方もいます。これは有能です。美人養護教諭なんて、毎日自転車やらマイカーやらで飲食物を差し入れしてくれるんですから。終盤で暴力教師にばれて脅迫まがいの求婚をされますが、これも主人公たちが、頭脳労働担当が立てた計略により暴力教師をハメて退治しちゃいました。

 基本的に、敵は主人公たちのペースに乗せられて踊るだけのパペットです。

 『全共闘』というキーワードについては後述します。


3.ヒロインズがベタ惚れ

 女生徒は20人。全員が男子に全面協力です。「あたしにはカンケーないね」とか「そんなことしちゃいけないんじゃないかな」なんて女子は一人もいません。

 名有りキャラは3名ですが、これがまた有能で。どうやって懐柔したのか、母親の一人に盗聴器の設置までやらせるんですよ。

 犯罪だっつーの。


4.都合の良い世界

 廃工場の具体的な広さは表現されていません。でも、主人公たちが校長たちをハメて嘲笑うために一から作り上げた迷路の広いことといったら! 地面の下まで大人が十分立てるくらい広く深く掘り下げちゃって、確かコンクリが敷設してあるはずなのに。

 そして、工場の地面はお砂場か何かなのでしょうか。河川敷だぞそこ。地面の硬さを舐めすぎだと言わざるを得ませんが、そこはさすが無敵主人公としておきましょう。

 トランシーバーも驚異です。普段は荒川の向こう岸からが精一杯なのに、誘拐されたキャラを救出に向かった時は、そこから遥か離れた廃工場までバッチシクリアーな声が届きます。

 さらに、盗聴器の一つはまるで天使の羽のように薄く軽やか。だって、夏物のジャケットの内ポケットに入れても気づかれないんですから。しかも料亭の奥から100メートル先まで電波が届く優れもの。その電波を100メートルおきに廃工場まで中継してくれるのは女子連。盗聴器と中継器はもちろん外に残った男子謹製です。

 ああそうそう、廃工場には大量の遺棄物があり、どれも彼らの籠城に役立つものばかりです。水は消火栓があって飲み放題浴び放題です。


 次回に続きます。

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