ぼくらの『なろう』戦争

タオ・タシ

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 廃工場に無断侵入した上占拠し、遺棄物を無断で変形・改造して立て籠もる。

 外に向けて無許可のFM電波を複数回にわたって送信。

 自宅から多量の花火を勝手に持ち出して使用する。

 誘拐犯に親からくすねた金を渡した上で勝手に逃がし、その特徴及び誘拐から解放までの状況を偽証。

 盗聴器を複数仕掛けて会話を盗聴し、先のFM放送で無断使用する。

 ……別にピカレスクロマン小説の筋書きを紹介したわけじゃありません。『ぼくらの7日間戦争』(宗田理 1985年)において主人公たちがやらかしたことの数々を列挙しただけです。

 子供の希望により読み聞かせをしたことで本作を初めて読みました。いろいろ思うところもありますので、作品の特徴をいくつか並べ、かつ、本作が当時ウケた理由について、稚拙ではありますが考察を加えてみたいと思います。


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1.主人公たちが無敵

 彼らは中学1年生。家庭と学校生活に嫌気がさした彼ら20名はしめし合わせ、終業式からの下校途中に廃工場に集合し、立て籠もります。

 彼らはダブルリーダー、荒事担当、頭脳労働担当、調理担当などきれいに役割が分かれていて、有能です。誰一人失敗したり、おっちょこちょいな不始末をやりません。だから彼らの企ては全てうまくゆきます。

 1人、直前に暴力教師に怪我をさせられて外に残った男子がいますが、後方支援任務に徹する彼は輪をかけて有能です。FM放送設備や盗聴器から時限爆弾まで作っちゃいます。もちろん全て、肝心な時に作動せず冷や汗なんてシーンはありません。

 ついでといってはなんですが、彼らは清純です。12、13歳の野郎が20人集まるんですよ? ビニ本やら週刊プレイボーイやらを持ち込んだり、雑魚寝なので夜中にトイレでハァハァしそうなもんですが、やりません。そういう間接描写すらないです。

 この無駄のない動きと統率の取れ具合はまさに軍隊、もとい群体と形容できるでしょう。今もまだまだ軍事アレルギーは根強いですが、発表当時この作品を『全体主義的』と批判した人はいなかったのでしょうか。調べきれませんでしたが、いるわけないよな。

 なぜそう思ったのかは後述します。


 次回に続きます。

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