第19話 5個入り菓子パン(ピーナツバター)
昼の貢ぎ物は粒あんパンとシベリアにした。
あんこが被ったが透里はご機嫌で頬張っていた。
粒あんとこしあんは別の食べ物。
だから被ってはいないとの事だ。
以上はあんこに関する透里理論。
まあそれはともかく。
今、僕と透里がいるのは厚生棟裏の広場。
厚生棟の売店等から近いため、放課後でも結構生徒や学生がたむろしている。
「人が多いな、やっぱり」
「その分観察しやすいという事でもある」
視線の先には男女混合7人程の集団。
中には西山の姿も見える。
「向こうにも『虫眼鏡』持ちがいる。こっちがいるのはバレバレだな。ただ今更こっちを誘おうとしてくる様子は無さそうだ。数の優位を信じているんだろう。
あともう1人、別のアカシック・ウェポン持ちがいるようだ。能力を使っていないから詳細は不明」
「それで騎士団はどれを狙うと思う。僕らを含めて3集団のうち」
「1人のところは能力を使っていないから人間を特定できないな。だから襲うならこっちか向こうだが。僕なら向こうを狙うな」
「理由は」
「アカシック・ウェポンを倒せば自分の力になる。騎士団の偽物は倒されても相手の力にはならない。
だから僕なら総力を使って向こうの最弱の機体をまず削る。1機でも削れれば十分さ。戦力比をみて逃走するなり追撃するなりすればいい。
あとはまた後日、同じように戦いを仕掛けるまでさ」
「それで透里の目的は」
「騎士団のアカシック・ウェポン奪取阻止。取り敢えずはそれで充分だな。面倒なら向こうのアカシック・ウェポンも倒す。ただ騎士団に倒されそうなら先に倒しておこうかという程度で十分だ。奴らはどうせそのうち分離なり自滅なりするだろう」
「内部抗争で誰かがアカシック・ウェポンの総取りに成功したら」
「その時に倒すさ。アカシック・ウェポンの複数台起動は無茶苦茶疲れるんだ。効率的に動かすとならば尚更。出来るものならやってみろ、って処だな」
なるほど。
そんな訳で僕と透里はベンチに座って状況を見守る。
ちなみにその間のおやつは透里の大好きなミニ菓子パン5個入りシリーズ。
今日はピーナツバターだ。
「これも悪くないと思うのだがな。やはり至高は粒あんパンだと思うのだ。出来るだけ小豆の風味も残して砂糖控えめで。そしてパン生地は薄い方がいい。時に薄すぎて中のあんこが透けてている状況もまた良しだ」
透里は美味しそうにパンを食べている。
2個目を食べ終え、3個目に手を伸ばそうとした時だった。
ふっと地震のような突風のような何かを感じた。
見ると向こうの集団が消えている。
透里を見る。
不承不承という感じでパンの袋をバックに入れているところだった。
「全く間の悪い奴だ」
いやそれは違うだろうと思いつつ。
僕と透里も戦場へと移動する。
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