第18話 魔女と透里と僕の部屋

 そう気づくと逆にドキドキしてきたりもする。

 神流先輩、かなりの美人だ。

 身長は167センチの僕より高くて細くてモデル体型。

 顔もちょっと東欧系入った感じ。

 胸はちょっと薄い方だけれども。


 そんな先輩と今、2人だけで狭い自室にいる。

 しかも先輩は僕のベッドに半分横になった感じで寛いでいる。

 いかん、変な事を意識しては。

 相手は年齢不詳の魔女だぞ。

 比喩的な意味では無く実物の。


「実は私の部屋はなかなかに散らかっていてな。住み心地が悪い。何せこの学校が出来た時から住んでいるからな。当然物も多くなる」


「そんな頃からいるんですか」

 ついつい突っ込んでしまう。


「何せ箱庭の管理を請け負ってしまったからな。結果が出るまでやめる訳にもいかん。そんな訳で永遠のJK2としてこの寮に住んでいたのだよ。色々あって遂に今年、JK3へと進級してしまったがな」


 JKなんて言葉を本物女子高生が使うな。

 いやまて本物と言っていいのかこの人は。


「まあ事象が始まったからこのお役目もそう長くは続かないだろう。今年度で無事に卒業出来るかなと思っている」


 ん、という事は。

「つまり騎士団とかと戦うのも来年3月位までには終わるのですか」


「夏までには余裕で終わるだろう。これはまあ、運命の魔女ノルンとしての勘だけどな」


 なるほど。


「そうしたらこの学園も解体ですか」


「それなりに実績を出し始めているし学園自体は残すだろう。だからその辺は心配しなくても大丈夫だと思うな」


「あとは中間テストと期末テストそれぞれ1回分の不安ですか」


「それなら優秀な講師を呼べばいいだろう。こんな風に」


 先輩は身体を起こして腕を伸ばし、何も無い空中で何かを掴んで。

「よいしょっと」

 引っ張り下ろした。


 僕のベッドがドン、という音を立てる。

 落ちてきたのは短パンにTシャツ姿というラフな格好の……透里!


 透里は一瞬きょとん、として固まって。

「え、えっ、えっ、えっ、ええーっ」

と驚いて周りを見回した。

 どちらもいつもの透里にない表情でついつい見入ってしまう。


 そして透里は。

 僕の顔を見て。

 神流先輩の顔を見て。

 深く深くため息をついた。


 状況を説明しようとする僕を手で制す。

「大丈夫。何がどうなったのか大体想像はついているから」


「私と文明君が2人きりで個室で仲良くしていたら気になるだろう。だから説明ついでに呼んでやった。感謝しろ」


 透里は神流先輩を全く無視しして僕の方を見る。


「まあ文明も色々とお疲れという処だな。魔女は出るし西山には言い寄られるし」


 口調と表情がいつもの通りに戻った。

 ちょっと残念な。


「知っていたのか」


「僕のアカシック・ウェポンは『虫眼鏡』と『軽石』。『虫眼鏡』を使えば現在までに学園内で起きた事案は全部確認出来る」


「つまり文明君が心配でアカシック・ウェポンを使ってまで確認したという事だな」


「単に戦況把握上の都合だ」


 透里はそう言ってそっぽを向く。


「まあ素直で無いのは照れと解釈してやろう。

 さて、明日も予定は盛りだくさんだ。イチャイチャしてもいいが程々にな」


 おい。

 でも僕が突っ込む前に。


「そういう事は明日もまた何か事案がある訳だな」

 透里が冷静に突っ込む。


 神流先輩はにやりと悪そうな笑みを浮かべた。


「それは運命の魔女ノルンとして教えられないんだな。ただ今後もメニューは色々盛りだくさんとだけ言っておこう。乞うご期待!」


 そう言って。

 神流先輩は体を起こしてベッド上で立ち上がると。

「よいしょ、っと」

 何かを乗り越えるようなモーションをして。

 そしてそのまま消えてしまった。


 気づくと残されたのは僕と透里。

 透里のむき出しの腕と脚が妙に眩しくて気になる。

 しかもシャワー浴びたてという感じだったらしい。

 まだ少し濡れた髪とか、石鹸系の香りとか……


 透里がまた深く深くため息をついた。


「すまん。こういう状況だったからどっちのアカシック・ウェポンも持ってきていない。もう少しして寮内がもう少し静かになったらアカシック・ウェポンの力を発動して送ってくれ」


「了解」

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