第17話 魔女な侵入者

 結果。

 あらん限りの罵詈雑言を僕に吐いて。

 西山は走って行ってしまった。

 まあ結局何をやってもこうなる結果だったのだろう。

 西山だけに有利な結果にならない限り。


 だから僕は後悔はしない。

 それに西山がああいう奴だというのは皆知っている。

 少なくとも中等部から持ち上がりの奴は。

 だから学校で変な噂や問題になる事も無いだろう。


 さて。

 そんな訳で部屋に戻る。

 ちなみに僕の部屋は102号室。

 寮監室から渡り廊下を通って中高男子寮に入ってすぐの場所だ。


 下一桁が偶数番号の部屋は北向きで陽が差さない。

 その代わり冷房の効きは非常に良い。

 暑がりの僕には悪くない部屋だ。


 鍵をさして開いてと。

「あ、間違えました」

 中に人がいた。


 慌てて締めて気がつく。

 ちょっと待て。

 自分の鍵で自分の部屋を開けた筈だ。

 念の為位置と部屋番号を確認して。

 そしてもう一度開ける。


「やあ」


 間違いない。

 僕の部屋に不審者がいる。

 しかも見覚えがある不審者だ。

 今日の放課後にゲームの解説をしてくれた魔女。

 神流先輩だ。

 まったりとベッドで本を読んでいらっしゃる。


「何、人の部屋で寛いでいるんですか」


 一応小さい声で言っておく。

 この状況を知られたら洒落にならない。


「取り敢えず扉を閉めてくれ。話も出来ない」


 まあそうだなと思って扉を閉めた。


「実は大した理由じゃない。文明君がアカシック・ウェポンを起動したのに透里が気づいてな。心配するものだから代わりに様子を見に来てやった。それだけだ」


「それなら寮の受付に行けばわかったじゃないですか」


 男子寮女子寮とも受付と寮監室は共通だ。

 だから受付までなら女子でも普通に行く事が出来る。


「いや受付の方は確認したんだがな。ついでなんで他にも色々確認しようと思って。どうせならご挨拶も兼ねてとお部屋にお邪魔した訳だ。残念ながら思った以上に片付いているな。エロ本でも転がっていれば楽しかったのだが」


 おいおいおい。


「今時そんなの転がっている部屋は無いでしょう」


「昨年の大掃除の際にはゴミ捨て場に大量のエロ漫画が捨ててあった。だから今でも寮の何処かにはあるはずだ」


 なんだかな、もう。

 でも西山の時のようなイライラ感とかは感じない。

 勝手に押しかけてこられたのに。

 先輩が透里に似ているせいだろうか。


「まあ見たとおり何も面白いものは無いですよ、この部屋は」


「そんな感じだな。強いて言えばそこのパソコンのハードディスク内を探査したい気もするが」


「プライベートな領域なので勘弁して下さい」


「それは残念」


 そんな下らない会話をしつつ。

 僕は不快感を感じない理由を理解した。


 西山のあのおもねるような。

 それでいて自分中心にしか考えていない感じ。

 それが先輩には無くてさっぱりしているからだ。

 つまり不快感を憶えたのはあくまで西山のせい。

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