第14話 クリームパンとカ●リーメイト

「さて、そろそろこの部屋の表側に探検部員が戻ってくる。そんな訳で私はこれで失礼する」


 そう言って神流先輩は姿を消す。

 表側、つまり普通の状態の理化学実験準備室に戻ったらしい。

 2人で冷めかけた紅茶を口にして。


「戻るか」

 そう言って部屋を出る。



 特殊教室棟を出たところで透里は立ち止まる。

 指を鳴らす。

 音が戻ってきた。

 風が木々を揺らす音。

 遠くの人の声。

 車の音。


「どうする。厚生棟に寄っていくか」


「その前にひとつ聞きたい」


 透里は立ち止まったまま僕の方を見る。

 目が笑っても嗤ってもいない。

 何だろう。


「答えられる事なら」


「神流先輩との会話でわかったと思う。僕も魔女だ。それについてどう思う」


 ちょっと僕は考える。。

 まあさっきの会話の雰囲気だと確かにそうだろう。

 でもどう思うと言われたところで困る。

 こいつとの付き合いも3年を超えた。

 だから何を今更だという感じだ。


「参考までにどんな魔法が使えるんだ?」


「それは個人情報で秘密だ」


「さいですか」


 うん、僕の感想は以上。

 これで終わってしまった。

 でもそれでは透里も納得しないだろうから少し説明サービスしてやろう。


「まあこんな処だな。今更そう言われた処で透里は透里だろ」


「ならもし出会い頭に僕は魔女だとカミングアウトしたら」

 これならすぐに答えられる。


「厨2病だと思って生温く見守る」


 ぶっ。

 透里が吹き出しやがった。

 おいおいおい。


「こっちは真面目に答えたつもりなんだがな」


「いや悪かった。文明は正しい。認めよう」

 まだ微妙に笑いを堪えていやがる。


「なら質問は以上だ。取り敢えず厚生棟に寄ろう。夕食のミニクリームパン5個入りを買いたい」


 凄く透里らしい夕食だ。

 しかし。


「その偏食、少しは気を付けた方がいいんじゃないか」


「朝はバランス栄養食を食べているから大丈夫だ」

 透里は平然とそう返す。

 でもそれはカロ●ーメイトの事だろう、きっと。


「最悪、魔法で光合成でも何でもするからいいさ」


「出来るのか」


「出来ない」


 駄目やん。

 そんな感じ、つまりはまあ和やかに2人で厚生棟に入っていく。

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