第13話 魔女の舞台解説

「何故そんな事をする必要があったんですか」


「次に来る時代を知り、また導くためだ」

 神流先輩は一呼吸して、そして続ける。


「まもなく魚座の時代が終わり、水瓶座の時代に入る。ひとつの時代が常識が崩れ、新たなものに取って代わる。この辺は後でネットででも調べてくれ。色々と親切な解説があるはずだ。


 そして新しい時代とはは何か。社会様式は何か。そもそもどんな世界になるのか。

 それを知るために様々な勢力が共同で実験場を作った。

 実験場というか、まあ箱庭だな。


 縮小理論とか外八州・内八州史観とか色々含めて作った世界の箱庭。

 それがここ、秋津学園だ。


 土地の性質や様々な術式等により

   ○ 世界の現象がこの箱庭に反映され、

   ○ またこの箱庭の現象が世界に反映されるように

この箱庭は作られた。

 そこで来たるべき『水瓶座の時代』の姿を求めるシミュレーション。それがゲームの正体だ」


 うん、わからない。

 言葉はわかるし説明が難しい訳でもない。

 僕の知識とか常識とかと色々かけ離れていて理解しがたいだけだ。


「わかるけれどわからないという顔をしているな」

 見抜かれた。


「そもそも魔法とか術式というところで今までの常識が邪魔をするんです」

 先輩は頷く。


「まあな。今は科学知識が行き渡っている分、現実の変動が少ないからな。

 ただ科学と魔法は対立するものじゃない。

   ○ 現実が変動しない際に成り立つルールが科学。

   ○ 現実を変動させるのが魔法。

 そんな感じだ。


 現実を変動しやすくするのなんて難しくない。

   ○ 宗教的極限に集団を追い込むとか

   ○ 信じたくないような大惨事を発生させるとか

   ○ 非常に心を動かされるような映画を大勢が見るなんてのでも

現実は変化しやすくなるんだ。

 そんな現実を変化させやすくする技術と、変化をコントロールする技術。

 それがいわゆる魔法って奴だな」


 明快でないものを明快に説明されてしまった。

 おかげで僕の思考の常識部門が知恵熱を発しそうだ。


「まあこれでゲームに困らない程度には理解できただろう。他に質問はないか」


 この状況でそう言われても……

 透里について色々聞きたい気もするが、それは本人から聞くべきだろう。

 とすると、後は何があるだろう。

 あ、そう言えば……


「あの騎士団は何なんだ」

 あの集団を何と呼んでいいかわからないが、これで先輩には通じたらしい。


「今度来る時代が水瓶座の時代なら、今は魚座の時代なんだ。そして魚座の時代を象徴する人物はイエス・キリストと言われている。

 そしてあの連中はキリスト教系秘密結社でももっとも有名な連中だ。聖堂テンプル騎士団。十字軍時代から現代まで生き延びている秘密結社さ。


 奴らは奴らの目的がある。次の時代も『キリストの時代』にすることだ。そのため、まず前哨戦である箱庭での戦いで勝利を収めようとしている。自ら持ち込んだ魔法兵器を使用してな」


 あっさり。

 管理人だけあって全てをお見通しのようだ。


「管理人としては何もしないんですか」


「あれもゲームの一要素だ。あれが勝利するようなら次の時代とやらも大したものじゃない。そういう判断になる」

 そういう事なのかと、僕は何となく理解する。

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