第12話 透里と僕と神流先輩
「申し遅れたが私は
「こいつの高校3年と年齢は一致しないからな。大体僕が中等部1年だった時、既に高等部2年だったんだ」
「昨年から始めた同好会活動が楽しくてな。久しぶりに進級させてもらった」
何かとんでもない事をさらっと言っているような。
ただ。
少し透里のテンションが違う。
いや、違わないのが違うと言うべきか。
透里はこれでいて割と人見知りする。
そんな時は大人しい女子生徒を演じたりする訳で。
こんな遠慮ない感じで接する相手ははじめてだ。
それに神流先輩の雰囲気とか口調。
透里とよく似ている。
「まず断っておくが、こいつと私とは兄弟姉妹とか血縁とか一切無いからな」
透里に見抜かれた。
それでもかなり親しい間柄のようだ。
透里がどう見ても年上の神流先輩をこいつ呼ばわりしている。
「まあ昔からの知り合いではあるけれどな。
今は
「黒歴史だ」
透里は否定をしていない。
「透里は色々面倒くさい奴だがこれからも宜しく頼む。透里が相当気に入っているようだから手放さないだろうけれどな。己の不幸と思って甘んじてやってくれ。なお透里は私と違って年齢と学年もちゃんと一致している。その点は安心していい」
おいおいおい。
何か色々とんでもない事を言われたり押しつけられたりしたような気が……
そして透里は透里で赤くなったり青くなったり百面相しているし。
普段の1シーズン分位の表情のバリエーションを見たような気がする。
こういう透里もたまにはいいなとか思ったりして。
「取り敢えず紅茶でも。容器はともかく葉っぱ自体はアパ・キ・パサンドのだから悪くないはずだ」
中型ビーカーに入った紅茶が僕と透里の前に。
「砂糖はそこの『グルコース』と書いてある試薬瓶から入れてくれ。レモンは無いが『クエン酸』の瓶からほんの少しだけ入れるとそれらしくなる」
実験室感満載なお茶だ。
ただ確かに香りはとてもいい。
「さて。透里の用件は何だ」
「管理人として、文明にゲームの設定とルールを教えてやってくれ」
「了解だ」
神流先輩は頷いて。
紅茶入りビーカー片手に僕の方を向く。
「ゲームそれ自体は非常に簡単だ。
○ 目的は自分が望む世界の実現。
○ 使用できる道具は学園内にばらまかれた魔法的な武器や道具。
○ それぞれの武器や道具は所有者が必要な際に自動的に起動展開する。
使用方法はその際に自動で教示される。
○ 戦闘は一般人を巻き込まないよう異空間を展開して行う事。
こんな感じだな。
期間は未定。まあすでに始まってしまったけれどな」
ちょっと考える。
「アカシック・ウェポンもその魔法的な道具の1つですか」
「ああ」
神流先輩は頷く。
「その最たるものの1つだ。あれを実現するには結構苦労した。
○ 必要な魔術の本や魔術材料を買い集めたり
○ この学園に即したアカシック・レコードの写本を作ったり
○ 学園のあちこちにそれなりのシンボリックアイテムを安置したり
なんてやってな。この学園の建設費用の実に2割以上が魔術関係費用だ。これを誤魔化すのも色々大変だったらしい」
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