第9話 鴉の羽ペンとチート
先程と同じ時計塔のある広場。
違うのはそこが巨人の戦場と化しているところ。
1機は翼を持つ漆黒の人型機体。
形態は透里の『虫眼鏡』より細身で背が高い。
仮面を被った細身の男が黒い羽を背負っているという感じだ。
そして反対側は白い機械騎士5機。
だが今回の騎士は更に分厚い装甲に長槍装備。
更に背中に巨大な白い羽を背負っている。
「主天使級の中級天使だな。5機も導入してくるとは豪勢な」
そう透里が言った時だった。
「そちらは誰?敵?味方」
頭の中に声が響いてきた。
ちょっと舌足らずな女性の声だ。
「どちらの味方でもない。まあ敵だな」
「あらそうなの。残念ね」
「まあお互い様といった処だな」
どちらも感情がこもらない感じでそうやりとりする。
「まあ、まずはお手並み拝見。たかが中級天使相手に苦戦するとも思えんが」
「いいわ。クロウちゃんの実力をご覧なさい」
漆黒の巨人が飛び立つ。
白い機体もその後を追って空中へ。
空中で前3機、後2機の隊列を作って漆黒の巨人を待ち受ける。
「クロウちゃんか。アカシック・ウェポン『ペン』、モデルは鴉の羽ペンというところか。なんだかな」
透里のそんな感想とほぼ同時に。
漆黒の機体が長刀を抜き放つ。
右脇に刀を取り検査機を後に下げた姿勢を取って。
次の瞬間。
放たれた矢のように加速した。
コースからして狙いは右端の白い機体。
だが。
白い機体は全機そのまま横へすっと移動。
隊列の中心で漆黒の巨人を迎えうつ。
「戦法的には騎士団の方が正しい。だがな」
透里が呟く。
騎士団は槍を揃え、黒い機体の方へ突き出す。
その瞬間。
黒い機体が異様な動きを見せた。
あり得ない機動で左方向へ動き槍を回避。
斜め下から長刀を一閃。
白い機体が1機が、翼と右腕を失い落ちていく。
「何だいまのは」
「チートさ」
透里がそう呟く。
「アカシック・ウェポン『ペン』の力で結果を上書きした。あの能力を攻略しない限り『ペン』には勝てない。騎士団も相手が悪かったな」
「そんなの相手にする方法があるのか」
透里は頷く。
「いくつかな。例えば書き加えても敗北が否めない位の形で書く。『ペン』はあくまで書き加える能力だ。書き直す能力では無い」
1機失った白い騎士団と漆黒の巨人が再び交差する。
今度は相打ちに近い。
白い機体もまた1機落ちていったが、漆黒の巨人も翼の一部が切られた。
本体にも槍で突かれた損傷が2箇所。
斜めにゆっくりと高度を下げていく。
「だがあの程度ならな。書き加えでどうにかなる」
漆黒の巨人の翼がふっと復活した。
本体の損傷も消えている。
「書き加えたんだ。損傷は消えた、とかな」
おいおいおい、それは確かに。
「チートだな」
「ああ」
透里は頷いた。
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