第8話 放課後と第3事案
放課後。
透里は校門を出た後、寮や厚生棟の方では無く大学部の方へ歩き出す。
「ひとつ聞く。アカシック・レコードって未来の出来事まで含めて記載されているんだよな。なら今後戦いに勝つか負けるかまで全部見えているんじゃないか」
僕のちょっとした疑問に。
透里はにやりと嗤った。
「残念だがな。今現在以降のレコード部分についてはページが閉じていて読めない。読んだり操作したりするには特殊なアイテムが必要だ」
「なるほど、良く出来ているな」
「まあな」
彼女はそう言って肩をすくめる。
その動作の理由が今ひとつ僕にはつかめなかった。
でもまあ、透里が想定外の動きをするのはいつもの事だ。
「さて、目指している場所は」
「大学部中央、時計塔広場。あと10分少々で戦いが始まる」
透里には色々わかっている模様だ。
「それでどんな戦いなんだ。昨日の連中とアカシック・ウェポンの戦いと聞いたが」
「ペンを持つ奴は自分の望む世界を書き換えにより実現しようとしている。
騎士団の連中はアカシック・ウェポンを手に入れて自らが信じる世界の降臨を早めようとしている。
どっちにしろそんな妄想世界は他人に迷惑なのだがな」
いまの最後の言葉で透里の目的が何となくわかった。
「両方が敵か」
「ああ、粉砕する」
「勝算は」
「普通に考えればこっちの勝率は限りなく低い。騎士団はそれなりの部隊を繰り出すだろうし、対するは最強のアカシックウェポンだ。僕のアカシック・ウェポンは2種ともあまり戦闘向きではない。ただな」
透里は悪そうに嗤う。
「負ける気は実は無い。唯一にして最大の心配は今言った敵2勢力には無い」
また妙な事を言う。
「どういう事だ」
「僕らの他にもアカシック・ウェポン持ちが介入する可能性がある」
そうか。
その可能性まで思い至らなかった。
「ならどうする」
「無視する。そこまでの変数は計算しきれない」
透里はそう言って、メイン道路から右に折れる。
この小道は大学講義棟AとBの間を通りぬけて。
そして時計塔が中心にそびえる広場に出た。
既に広場の一角に見覚えある雰囲気の一団が陣取っている。
白人系の男子学生ばかり10人程。
先頭の1人がベンチに座っていた女子生徒に声をかけて。
そしてふっと2人が消えた。
同時に一団の男子学生も姿を消す。
「第3事案、開始」
透里はそう言って、例によって指を鳴らす。
パチン。
その音とともに世界が一変した。
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