第3話 違和感と疑問と謎の言葉
「ところで聞きたい事って、何だ」
透里の許可が出たので質問してみる。
「もし、今までいた世界と今いる世界が違うような気がしたとするだろう。そういう場合に確かめる方法ってあるかな」
透里は悪そうな表情を浮かべる。
「そんな気がしたとすれば、その理由は次のどれかだな。
1つめ、単なる記憶違い。諦めて正しい記憶で憶え直せ。
2つめ、病気による記憶混乱。場合によっては精神科行きだな。
3つめ、
そして4つめ、実は変わったのは世界全体だった。
まあ3つめと4つめは視点が違うだけで同じ事象だな。そして答がどれか、確認する方法があるかも微妙なところだ。どうせ記憶内にしか証拠は無いのだろう。なら確かめる手段など存在しない。
それ相応の道具を持っているなら話は別だけどな」
ちなみに
透里に限らずクラスメイト大体が僕をそう呼ぶ。
さてと、今の透里の結論はつまりだ。
「確かめようが無い、というか」
「いいや」
透里は微妙な発言でその辺を濁す。
「まあその辺は後に置いておこうか」
「思わせぶりだな」
でもまあ、奴には良くある感じだ。
その時は僕もまだそう思っていた。
「さて、ここからは思考実験だ。もし世界が本当に変わったとしたら、それは何時だろうな。文明はどう思う?」
僕は考える。
「難しいな、証拠も無いし」
「思考が甘い、相変わらず」
透里はそう言って嗤う。
「世界が変わったなら、その瞬間から違和感を憶えるはずだ。そして違和感はその世界になれるとともに加速的に小さくなる。
つまり文明の世界が変わったのは校長訓示にごく近接した時間。今朝くらいと見るのが正解だろう」
そう断定されても理解がついていけない。
「昨日とか一昨日とかは」
「今は運動部にも文化部にも、それこそ学校中に亜人がいるだろう。だから寮で暮らしている限り絶対に違和感に気づく筈だ。例え個室で暮らしていようとな。
例えば厚生棟コンビニで魔女の店員が魔法で弁当を温めていたり。
掲示板にライカンスロープ用に月例注意報が張ってあったり。
違和感のきっかけなんていくらでもあるんだ。
それなのに今朝まで何も感じる事が無かった。
なら簡単だ。違和感の原因が発生したのは今朝だ。間違いない」
透里は嗤いを浮かべたままそう言い切る。
「そうなのかな」
透里は小さく頷いた。
「なら特別だ。普通は現象発生から答合わせには時間が結構かかる。だがそれを少しでも短くする呪文を唱えてやろう。
『アカシック・ウェポン』、この言葉を覚えておくといい」
透里は牙があればみえるような嗤いを浮かべたまま。
その言葉を僕に告げた。
「その『アカシック・ウェポン』とは何だ?」
「今は説明しない。その必要が無いからな」
こう言われたらどう聞いても無駄。
透里はそういう奴だ。
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