第7話 武器がまともじゃないなんて認めない
哀れな爺さん達はうなだれたまま視線を彷徨わせる。
どうやらよほどさっきの語尾の決定じゃんけんが効いているようだ。
「あー、ダージェフ…… 儂らの代わりに説明してやってくれ…… にゃん」
あまりにも不憫だ。
見ていられないというのはこの事か……
「わ、わかった」
ダージェフがごくりと唾を飲み込む。
「まずは、この爺さん達は三つ子の機械技士【ドリア】といって左からダルス爺、バルス爺、ボルス爺だ。 俺らアスレ=チック団の主な武器を作成してくれてる」
一人破滅の言葉が混ざってるんだが……
それにしても【ドリア】…… なんて美味そうな名前にしてんだ……
ドリアと言えばサイ〇リア…… サイ〇リアと言えばドリアだな……
「ここでの戦いはさっきも見てもらってわかったと思うが、この武器【オートナート】を用いる」
ダージェフの背から取り出したのは五十センチ程の長径の銃。
まるでアサルトライフルを思わせるかのような重厚感だ。
うん…… わかってはいたけどここはあれだ。 コー〇オブデュー〇ィ―や、PU〇GのようなFPSの世界だ。
苦手なんだよなぁ射撃……
どちらかといえば遊んでいたゲームはファンタジーの格闘ゲームが主で、FPSは友達にボロボロにされる程苦手なのだ。
「この直径五ミリの【プレート】を装填して使うんだ」
ダージェフは腰に下げた小さめの鞄から一つ銃弾を取り出し、見えやすいようにテーブルの上に置く。
モロ銃ですやん。
プレートというのに全然薄くないし……
「機械化が進んだこの世界ではこういった武器でなければ装甲を貫けねぇってばよ!」
そのエセ忍者違和感しかないのだが。
その語尾はやっぱりあかん!! 止めろ、暑いからってタオルを頭に巻くな! それっぽくなるだろ!
「帝国はさらに機械化が発展してるんだ。 全身サイボーグ化した奴なんかゴロゴロいやがる。 こういった武器じゃねぇと歯が立たねぇんだ」
あれかな全身サイボーグとか、マトリッ〇スかな?
いやいや、マトリッ〇スみたいなやつらとこいつらは戦ってんの!?
勝ち目ある? 映画見たことある? 俺らただの人間だよ?
顔が真っ青になるのと同時に隣に居た神父ジジイの頭が大きく頷くのが見えた。
「随分納得してるみたいだ…… な……」
あまりにも理解が早いのでちらりと見れば…… コイツ…… 寝てやがる!!
自分の尊厳が守られたからなのか、一切興味なしかよ!!
「ふごっ!? いやはや。 状況はよくわかりましたぞ。 あれですな、つまり帝国が全部悪いと」
全然今そんな話してねぇだろ!!
まだ銃の話しかしてねぇよ! 全部帝国のせいにしやがった。
「あ、ああ…… まさか今の話だけでわかったって言うのか!?」
いや、今のだけでわかるとか…… まだ何も説明もしていないだろ……
「儂には全てお見通しじゃ…… 貧困に苦しむ街、砂漠化が進む大陸、そこで必要な物はまずはなんだとお前さんは思う?」
ずいっと俺の前に立ちギラリとした瞳で真っすぐ俺の目を見る。
こ、コイツ…… 俺に答えさせようと!?!?
全員の視線が俺に集まる。
期待の視線。 この空気は外してはいけない空気だ。
そう、まるで、授業中にうたた寝をしていた際に当てられ、黒板の前に立った時と同じ……
「み、水じゃないかな……」
神父ジジイは目を瞑り大きく頷く。
「亀山君、君にしては上出来です」
「誰が亀山君じゃ!!」
こちとら突然振られて心臓爆発するかと思ったんだぞ!!
それに名前は中島だ! NAKAJIMA!!!
「そう。 水が一番必要になるはずじゃ、その水の実権を握ってるのが帝国。 違うかのう?」
鋭い眼光で言ってやったと言う顔をする。 かなりうざいな、この顔。
「いや、水は普通に流れてるぞ? 帝国は俺らから税の徴収を膨大にもっていきやがるんだ。 帝国の外なんて奴らにはどうでもいいのさ、子供も大人もまるでただの家畜みたいにな!」
「……儂としたことが見落としていたのじゃ。 ですが、もちろんその案もちゃんとありましたぞ」
嘘つけ!! 寝てただろ!!
「そういえば、さっき何かが完成したと言っていたが…… バルス爺、何が完成したんだ?」
バルス爺と呼ばれるあまりにもこの地盤が崩壊しそうな名前の爺さんが手に持っていた紫色の包みを解く。
「これだにゃん。 新しい【オートナート】、その名も【すぷ〇しゅー〇ー】にゃん」
あかん!! それはあかん!!!
お前ら何造ってんだ!! それインクしか出ない奴!!
任天堂に消されるぞ!!
長方形のような形の銃に見えなくもない【すぷ〇しゅー〇ー】。
「性能は使ってみてからのお楽しみにゃん。 さて誰が使うかにゃんだが……」
ちらりと視線が合い、勢いよく逸らす。
まさか!? ほんとに!?
嘘だろ…… いやいやだって俺それだったら普通の【オートナート】のほうがいいよ絶対。 だってそれインクしか出ないんだぜ、相手はマトリッ〇スなのに。 俺だけナワバリ争いするのか? そんなの絶対嫌だ。
神父ジジイがその挙動に気づき、俺の顔をじっと見つめる。
「ほう。 どうした、何を恐れている?」
来るな!! 疫病神が!!
思わず一歩後ずさる。
「実力もある。 たしかな才能もある」
おい、止めろ。 にやにやした顔で近づくな。
そもそもそっちの実力も皆無だよ!! 俺インクに潜れねぇから!!
頼むから【すぷ〇ちゃー〇ー】だけはやめてくれ!!
頼むッ!!
【すぷ〇ちゃー〇ー】は嫌。 【すぷ〇ちゃー〇ー】は嫌。
思わず手を顔の前で組み、必死に目の前のエセ神に祈る。
「ほう。 【すぷ〇ちゃー〇ー】は嫌か。 ならばお主はもう決まっておる」
願いが通じた!?
流石は神の導きの神父だ!! ちょっとは見直し……
「【すぷ〇ちゃー〇ー】じゃ!!!」
「このクソジジィガァアアア!!!!」
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