第4話 魅了(同性のみ)なんて認めない

 最悪の事態だ。

 何が最悪かというと心弾む異世界転移のはずが一瞬にして地獄に変わったからだ。


 何を思ったのかこの童貞をこじらせたクソジジイは、異世界で使えるチートにも勝る能力をあろうことか魅了(同性のみ)にしやがったのだ。


 つまり俺はこの異世界でずっとケツを狙われ続けることになったのだ。



「最初から知らない爺さんの話は疑うべきじゃったなぁ!!」



 憎たらしい笑みを浮かべ、笑うドラク○の神父。

 こんな奴が聖職者をやってんじゃねぇえええ!!


 絶対にこのジジイに死にも勝る苦痛を与えねば俺の気がすまない。


 絶対にだ!


 ちらりと先ほど二人で煩いと一喝してしまったダージェフと呼ばれた厳つい男を見る。


 膝を抱えてる!?

 メンタル弱すぎだろ!?



「どうした!? ダージェフ!? 貴様何をした!!」



 ポニーテールの女性が俺を睨みながら歩み寄る。


 ち、ちがうんですぅ!? 思った以上にメンタルが豆腐だっただけなんですぅ!!

 だから銃の標準を当てないで!!



「いいんだ。 レイファ。 俺があまりプライベートなこと聞いちまったのがいけねぇんだ」



 ダージェフは立ち直ったのかすっと立ち上がる。

 その目はうっすらと濡れていた。


 立ち直れてないじゃん!!思いっきり心に突き刺さってんじゃん!!


 おいおい…… その見た目は飾りなのか……



「そ、そうか」



 ほら、レイファさんも軽く引いてるじゃないか。

 やばいよ、この異世界まじでやばいよ。


 それもこれも現況がコイツのせいなんだが……



「あー久々に笑ったわい。 もう十分じゃ、戻してくれんかステラちゃんやー」



 爺さんは黄昏に染まる空に手を伸ばす。


 だが、何も起こらなかった。



「……嘘じゃろ…… 天界への道が開かん……」


「あっはっは!! どうした? 爺さん? 帰るんじゃなかったのか? まさか帰れなくなったんじゃないだろうな?」



 爺さんはさっきまでの笑顔が嘘かのように凍りつく。



「いや…… はは、どうしたんじゃろうな…… そうじゃよ、ステラちゃんもトイレが近いのかもしれん」


「アンタと一緒にするんじゃない!! 現実を見ろよ! アンタはこの世界に置き去りにされたんだよ! 日頃の行いが悪いからだな」


「なん…… じゃと……」



 ははは、いい気味だ。



「ふぅ、まぁアンタ達に害がないのはよくわかったよ。 私はここのリーダーを務めているレイファというものだ。 こっちが副リーダーを務めるダージェフ。 お前たちは空から落ちてきたようだが、どこから来たのだ?」



 まともな人をみると安心するな…… それに比べ隣の大男は…… もじもじするんじゃない……



「ラピュ○じゃよ」



 は!? おいまて!! しれっと嘘をつくんじゃないジジイ!!

 某有名ジブ○作品から拝借するんじゃない!!



「ほう…… ラピュ○ですか…… 始めて聞きました。 貴方達は空からどうやってここまで来れたのですか?」


「それはじゃな、メー○ェという工業大国エフタルで作られた軽量飛行装置を使ってな……」



 混ざってる!! 爺さんナウ○カとラピュ○が混ざってるよ!! たしかに世界観似てるけども!!

 それナウ○カの主人公が乗っていた乗り物だから。

 森へ帰っちゃうから!!



「この砂漠を超えた先にはそんな場所もあるのですか……」



 爺さんに任せるとロクなことにならない。 まずはここがどの世界かを知らないと。



「そ、それよりもここはいったいどこなんですか?」



 不思議そうな顔をするレイファさん。 



「なんだ? 知らないでここに来たのか? ここはブレイディア大陸の端ウルティマだ。 どうやら帝国の存在も知らないみたいだし不思議な連中だな」



 まぁ…… 天界っていう神の世界から落とされてきたわけだし、俺が知ってるのはEカードで帝国と戦う話だけだ。


 あ、それも帝愛か。

 カイ○しか出てこないや。



「私たちはその帝国と戦うレジスタンス【アスレ=チック団】だ」



 猛烈にダサい……

 え? なにその可愛い名前…… ロケッ○団みたいな。 アスレチック…… ジャングルジムとかあるんかな…… 子供は喜びそうだけど……



「どうした? 複雑そうな顔をして? 帝国は強大で歯が立たないことはわかっている。 だが、このまま悪政を働く今の帝国を許すわけにはいかない。 見たところそちらのお爺さんは何か特別な力を使えると見た。 どうか私たちに協力してはくれないか」



 深く頭を下げるレイファさん。


 それだけ危機迫っている状況なのだろう。

 周りを見渡してみてもこの場所があまりいい状況じゃないのはなんとなくわかる。


 周囲の家々は雨風を凌げる程度の造り、整備されていない道路、やせ細った子供の姿。


 どう見てもいい暮らしをしているとは言えないだろう。



「致し方ない…… それに儂らもいずれはその帝国に行かねばならんのだろう」


「え? 初耳なんだけど……」


「世界には必ず天界へ繋がる道があるのじゃよ、それはどの世界でも必ず王が所有しているものじゃ。 レイファちゃんや、帝国の国王と合うとすればどんな方法があげられるのじゃ?」


「しいて言えば、帝国の軍に入り優秀だと認められること、私たちのように反旗を翻し、直接王の首を狙うことか」



 おいおい、難易度鬼かよ……

 そうか…… 天界に戻れないと俺はハーレム(同性のみ)のままか、それはかなりまずい!!



「じゃから可能性の高いこちらについたほうがお得じゃろう。 のうレイファちゃんや」


「ふっ、アスレ=チック団のリーダーである私の前で交渉事など随分肝が据わっているじゃないか」



 いや、めっちゃ爺さんの足震えてるけど。

 爺さん忘れてたな。 下手すれば殺されてもおかしくない状況に今気づいたよな。


 それにしてもアスレチック団…… 改名しない?


 名乗るの恥ずかしいよ?



「はっはっは…… そうじゃろう。 儂らは今から仲間じゃ! 安心せい」



 これでいきなり頭を撃ち抜かれる事はなくなったということか……



「そうと決まればまずはお前たちに合う武器を見繕わないとな。 ダージェフ案内を頼む」


「おう」



 行かないでぇ!! まともに話が通じるのは貴方しかいないんですぅ!! レイファさーん!!カムバーック!!



「じゃ、じゃあ行こっか」



 頬を染めるな!! 中学生の初デートみたいなノリを止めろ!!

 爺さんもその生暖かい目を止めろッ!!


 こんな世界嫌すぎるわ!!

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