第2話 星の運命

 その日の午後、俺はゼミのグループ課題に取り組むために何人かで少人数用の教室を借りてプレゼンの準備をしていた。

 ゼミと言っても、2年生の俺たちはまだ本格的に研究に携わるわけでなく見学しているにすぎないのだが、たまに課題を出される。


「じゃあ、今日はこのくらいにしておこうか。」


 きりが良くなったところでグループを仕切っていた女子生徒が言った。

 時計は午後8時過ぎを指している。学校が閉まるのは9時でまだ時間はあるが、まだプレゼンの日まで余裕があるから適当な時間だろう。


「あーあ。今日も長かったぁ。」


「誰か今から飯行かね?」


 そんなことを言いながら皆やっと終わった学校での一日から解放されて、作業中よりも元気そうだ。

 大体片付けも終わり、全員席を立ったところで先ほどの女子生徒が言った。


「私、鍵返してくるね。みんな先に出てて。」


 教室は学校の事務室に申請して借りているもので鍵は自分たちで借用しなければならない。

 この後みんなで校門まで出て飲みに行くやつ、遊びに行くやつ、様々に別れるのだろう。

 俺は何となく一人になりたかった。


「俺が返してくるよ。明日早いからもう帰るし。」


俺は全員が教室を出て女子生徒が鍵を閉めたところで言った。


「え、あ、いいよ。悪いし。」


「大丈夫。皆も早く行かないと帰り遅くなっちゃうよ。飯、行くんでしょ。」


「おーじゃあ頼むな、宙。」


「うん、じゃあまた明日。」


軽く挨拶をすませ、俺は半ば強引に鍵を受け取り事務室に向かった。




「鍵、ありがとうございました。」


「ご苦労様」


 借用書にサインを済ませて事務室を出た俺は、誰もいない暗い廊下を歩く。もう人の気配はなく、自分の足音だけが響いた。

 少し歩いたところでふと横を見ると、わずかだが引き戸についている曇りガラス越しに灯りが見えた。扉の上についている教室名の札には¨部室6¨と書かれていた。何かの部活でも活動しているのだろうか。

 だが、物音ひとつしない…という事は誰かが電気を消し忘れたのだろうか。


「つけっぱなしは良くないよな」


 鍵が開いているか確認するために、軽く扉に手をかけると少し動いた。


(電気を消すだけなら入っても怒られないよな)


 俺は思い切って引き戸を静かに開けた。

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