四、『巫女殺し』の儀式。
第四章、プロローグ&本文その一
その学園の入学式に
広大な敷地を
共学なのに生徒会長が女生徒なのも、まだまだ女子の数が
──しかし、なぜにそれが、『彼女』なんだ?
あの古びた本家の薄暗い蔵の中で初めて出会った時からこの春休みにいたるまで、一時期ブランクはあるもののほとんどずっと一緒に過ごしてきた
本来だったら
まるで不安定な足元を無視してまで、
無性に胸騒ぎがした。
今にもどうにか
だから僕はその時決意したのだ。今度こそ本気で『彼女たち』の
──これ以上、僕ら三人の『思い出』を、壊してしまわないために。
四、『
日向のことを好きな
でも、私から潮を奪おうとする『あの女』は、もっともっと嫌い!
「……日向お嬢様、どうかなさいましたか?」
今日も私の
憎くて憎くてそれでも
だが、
今、目の前にいる私が、本当は『日向』ではないことに。
☀ ◑ ☀ ◑ ☀ ◑
おかしい。何かが変だ。
今日の
昨夜の
特に、今日は生徒会の手伝いは免除するから放課後はそのまま帰っていいだなんて、こんなことこれまでにはなかった。まさか『解雇』前の大サービスだったりするんじゃないだろうな。
万一の時のため駅前のハローワークへとこのまま直行したいところだが、その前にやらねばならないことがある。
「ふむ。五、六時限は自主早退とするか。
そうつぶやくとともに僕は、その足を女子専用第一校舎へと向けた。
日向お嬢様抜きで
今のご主人様二人の状況をかんがみれば、もはや余裕ぶっている場合ではなさそうだから。
☀ ◑ ☀ ◑ ☀ ◑
「──なぜです、なぜ僕たちの関係に
しかし、
「それはこっちのセリフなんだけどね。まあいいや。たしかに私は日向のことが好きだ、愛しているとさえ言ってもいい」
……やっぱりこいつって。いやそれより、そんなことを僕にカミング・アウトされても困るんですけど。
「それならなぜ、あんなことを」
「彼女を愛しているからこそ、壊すんだよ」
──なっ、ちょっと、あんた。
慌てふためく僕に構わず、王子様は今度はいきなり天を
「ふふふ。私だって不本意だがしかたがたない。そうしないと女同士である私には、日向を手に入れることはできないからね。本当に君たち男性がうらやましい限りだよ、好きな女性ができたら押し倒すだけで自分のものにできるのだから。だけどどんなに日向のことを
いや、男だからといって好きになった相手をむやみに押し倒していたら、身がもたない──て言うか『
「本当にわからないのかい? いや、わからないふりをしているだけだろう。何せ君と私は『同類』のようなものだしね」
「個人的な外見や性格や趣味趣向の同一性のことじゃないよ。あくまでも日向への想いに関してさ。私は日向のことをこの世の何よりも愛していると言える、場合によっては自分自身よりもね」
「……」
「だからこそ私は彼女を壊したいと思ってしまうんだ。彼女を永遠に自分だけのものにするために。他の何者にも奪われてしまわないようにね」
「………………」
「どうしたんだい、急に黙り込んでしまって。君にだけはわかってもらえると思っていたんだけどね」
ふむ。彼女と僕が『同類』かどうかはともかく、守り役として確かめておかねばならぬことが一つある。
「今、お嬢様を自分だけのものにするとおっしゃい「──あ、心配しなくてもいいよ」
いきなりぶち切られた。あんたは
「『同類』とは言っても我々は、けして一つのものを奪い合うライバル的な関係ではなく、むしろ対象物を仲良く
勝手に築くな。僕はそんな
「だってそうだろう。壊すっていうことは当然その結果として、精神が崩壊して『狂ってしまった』日向とつきあっていかなきゃならないということなんだよ? そんなことができるのは知り得る限り、君と私ぐらいなものだと思うけど」
急に目の前が真っ暗になり、過去の記憶の深淵へと引きずり込まれる。
久しぶりに会った少女の
「……いやに自信家なんですね。人を狂わせたあと、どんな状態になるのか知りもしないくせに」
世にもおかしなことを聞いたと言わんばかりに、肩を
「ふふふふふ。さすがに君は大嘘つきだね。今さら何を言っているんだい、日向なら
雨に
「そんなに彼女たちを、
ここに彼女がいるはずはないのに。
「大丈夫。我々ならお互いを尊重しつつ、十分彼女を共有できると思うよ」
いてはおかしいのに。
「それならいっそのこと僕のことなんか無視して、お嬢様を自分だけで独占すればいいじゃないですか」
なぜ、周りの人たちは何も言わないのか。
「それでは私の目的の半分も達成できないんだよ。私にとっては君も十分に必要不可欠な存在なのだから」
……こいつもしかして、『
「だって君こそが、日向を本当に壊し
まるでいまのぼくはかうんたーぱんちをくらったぼくさーゆだんしていたあまくみていたなめきっていためのまえのいっかいのじょしこうせいのことを。
──彼女は、すべてを知っていたのだ。
『
今も壊れ続けている少女を、見て見ぬふりしていることすらも。
「返事は急がないよ。時間はたっぷりあるからね」
そう言い残して役目を終えた王子様は、
演出家のOKもアイラブユーも出ないまま僕はただ、
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