二、紅き記憶(おもいで)の軛。
第二章、プロローグ&本文その一
──久しぶりに会ったその少女は、全身
こんなに多くの親戚が集まっているのを見るのは生まれて初めてであり、大人も子供もこれまで会ったこともない人ばかりだったけど、どんなに人波の中に埋もれていようとも、僕が彼女の姿を
しかしその時の僕は、いとけなき
──どうして、『あの子』が、ここにいるのだろう。
今この場所に彼女がいるはずないのに。そんなの絶対におかしいのに。なのになぜ周りの大人たちは何も言わず当たり前の顔をしているのだろうか。
この
振り向けば、この世の何ものをも
あたかもその少女は、見る者の運命を宣告する暗黒の死の女神のごとき
そう、彼女も気付いたのである。僕が
二、
『──
「相変わらずです。以前よりもますます感情豊かになり、内面的感受性も外面的表現力もごく一般的な少女のものに近づきつつあり、むしろ
『ふむ、やむを得ない処置とはいえ、こうして
「やはり巫女の条件が変質してしまった今となっては、もはや元の
『そなたに判断なぞ求めてはいない。引き続き月世の
「は、心得ております」
まったく、相変わらずだな本家のご当主様は。ご自分の孫娘を実験動物か夏休みの課題の朝顔とでも間違えているんじゃないのか?
『学園のほうでの、あの子の様子はどうじゃ』
──ふうん、今度は『
「ええ、相変わらず成績も良好で、生徒会長としての役職等もそつなくこなしておられます」
『
「はあ」
『とにかくそなたはどんな
「
いつものようにこちらの言葉の途中で、一方的に
手にしていた携帯電話を
──吐き気がした。
その両者の間をこそこそと
☀ ◑ ☀ ◑ ☀ ◑
──さあ、今日も新しい『日常』の始まりだ。
本家への定期報告を終わらせた僕は、そのやるせない怒りを解消する
まずは朝食を作りリビングに運び食器を並べ、洗面所に湯を張りタオルを準備し、その合間につけっぱなしのテレビから内外の情勢や天気予報をチェックする。
「
おかしい。これでもう十回以上も呼びかけているのに、返事の一つもない。御飯と聞いて反応しないとは
なかなか起きてこないご主人様に
部屋の中央のベッドの前には、まるで迷子の迷子の小猫ちゃんのような情けない表情の少女がたたずんでおり、僕の姿を見るなりほっとしたかのように口を開いた。
「
はしたなく持ち上げられた
──ひええええっ、ちょっと
「待てっ。それ以上裾を持ち上げちゃダメ!」
「だって、このままじゃ
「ああもう、いいからこっちに来てください!」
それからはまるで、戦争のような
まず本人を風呂場に放り込んでシャワーを浴びさせ→その
……ええと、どこからどこまでを僕が直接手を下したかは、コメントを
いったいどういうことなんだ。『予定日』よりも一週間も早いではないか。
──って、何なんだその、いかにも『
常に彼女の体調の万全に気を配り、巫女としての能力の育成に支障を
「うぐっ、えぐっ、ひくっ」
「もうその辺で、いい加減泣きやんでください。それより
学生
元々女子校である
「ひどい。こんな状態の
「学生の本分はあくまでも勉学ですので。それに『初めて』でもあるまいし、いい加減に一人で処理できるようになってくださいよ。これでも僕男なんですよ」
「我だって、好きで生理になっているわけではない!」
「はいはい。少々きついのはいつも最初のうちだけなんですから、できるだけ心を落ち着かせて安静になさっていてくださいね。それでは行ってきます」
「あ、こら! 潮のばか! もう嫌いじゃ!」
そんな逆ギレ巫女姫様の
過去のデータからして、あちらも間違いなく、『始まっている』わけで。
……しかし、『潮のばか!』か。
馬鹿じゃなかったらとっくにリタイアしているだろう。朝っぱらからこんな騒動をくり返している男子高校生が、いったい日本に何人いると言うのだ。
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