48.人生のダイス振るのは神様で
雪舟えまさんの短歌と詩の本を読みました。今まで小説しかまともに読んだことがなくて、あとはツイッターなどで断片的に見かけるだけでした。
でもその断片的に見かける短歌や詩は美しいものが多かったし、読んだ小説は言葉選びがきれいで素敵だったから、好きでした。
だけど、今回その本を読んでがっかりしてしまった。がっかりした自分にもがっかりしました。勝手に期待して勝手にがっかりして、ひどい。それにこんなふうになんにもしていないのに突然他人に失望されることがあるのだと思って、つらかったです。
それにたぶん、立ち位置がまったく違う。
がっかりしたきっかけの短歌がこれです。以下引用。
葉がのびて日に日に写真立てを押す 昔いじめた人元気かな
心から元気なわけはないと思いますよ。いじめられた人はいじめられたことを一生、死ぬまで忘れませんよ。
その後も読んでいって、詩か散文のようなものも読んでいくと、この人は人生を良いものと捉えている人だということがわかってきました。
たぶん、強い立場の人なのだと思います。
詩には、以下引用
あたしは他人の青春や夢に感染しやすく
すぐ泣く。
あまりにも美しく貴いものを
この世でただひとつ価値のあることを
たぶん、学生時代を強い立場で美しく過ごした人なのだと思います。
わたしのように恥と恐怖と空回りで出来た日々なんか知らない人なんだと思います。自分の存在を嫌ったり疑ったりしたことのない人なんだと思います。
今は結婚していらっしゃるそうです。
自分にも他者にも愛される自分を持っている人なのです。
その強い場所にいる人が、こんなふうに才能や能力を持っていて認められて、わたしは悲しい気持ちになりました。
わたしもずっと強い場所に、立場に行きたかった。死ぬほど頑張った。けれども頑張ったという過程があれば結果がついてくるわけでもなく、わたしは結局泥の中に落ちていきました。もうそのときには、全身がぼろぼろで指先ひとつ動かすこともできないで、たくさんのものを失いました。
わたしはわたしを愛せないし、他者にも愛されないし、才能も能力も認められることがなく、そもそもそんなもの持っていないのかもしれなくて、強い場所からは遥か遠い泥の底で這いつくばっている。
この差は何なのだろう。
才能のなさを言い訳に、するべき努力が足りなかったから?
人生を愛する寛容さを持っていなかったから?
その努力がまだ足りなかったから?
身の丈も知らずに欲張りすぎだった?
強い場所にいる人は、たくさんの経験から豊かな感情や体験を受け取って、さらにちからに変えることができます。
強い場所に行きたかった。強い場所に行きたかった。強い場所に行きたかった。死ぬほどに行きたかった。
わたしはわたしを愛したかった。人生を愛したかった。豊かなものにしたかった。
でも結果得たものはうつとパニック障害と統合失調症の薬です。
別に雪舟えまさんは悪くありません。いじめたうんぬんの短歌だって、短歌なんだから実体験より創作の可能性が高い。
ただわたしは、人生を、生きることを肯定的に捉えている人を受け入れることが難しいというだけのことです。劣等感を刺激されるから。妬んでしまうから。
妬みたくなんかない。これ以上負の感情を抱えたくなんてない。わたしはすでに醜い怪物みたいなものなのに、これ以上なにも妬みたくないのです。
わたしの作った短歌があります。
人生のダイス振るのは神様で出目にげらげら笑ってるんでしょ
わたしは神様というものがいるのなら絶対にそうだと信じているし、笑われているのはわたしです。
無垢な子供が自分の振るダイスの結果で転げ回りながら成長し、ファンブルで泥に突っ込むのを見てどうせ笑っているんでしょう。一方で、クリティカルが出た人には感心の声をあげたりしているんでしょう。
そうとでも思わなければ、わたしが転げ回って死ぬ思いで学校に通って、あれだけ望んだ強い場所に行けもせずに、そこから崖を転げ落ちていくなんて、認めることができない。なにも持たない、何者でもないゴミになったのを認めることができない。まだ努力が足りなかったのだなんて誰にも言わせたくない。わたしの努力を知らない人間に何も言われたくはない。でも神様はきっと知っているのに。なのにわたしを突き落とした。
人生の肯定とか関係なく、単純に相性が合わなかっただけかもしれません。
でも、悲しかった。美しい言葉を選ぶ人が、わたしの心に寄り添わなかったことが悲しかった。
それだけのことで、こんなに恨み言を並べてしまった自分に驚きます。この強い被害者意識。醜い怪物のようでしょう。
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