45.毒親ではない

わたしは確かに母のしたこと、言ったことで生きづらさを背負ったと思います。人格に大きく影響しました。

でも毒親とまで言っていいのかはわからない。ただただ相性が悪かったという不運の気がしないでもないのです。

母もわたしのせいで苦しんだのは間違いない。母が死んだらわたしは号泣するでしょう。

憎めないのです。恨みがないと言ったら嘘になるかもしれないけど、それ以上に子供を育てるというわたしにはできないことを成し遂げた人という感覚が勝ります。

弟も歪んではいるけれど、わたしに比べればよっぽとまともな大人に育ちました。

わたしと母は相性が悪かった。だから苦しめあってしまった。そんな気がしています。

今はほとんどの時間を別々の階で過ごして、母のたてる物音にいちいち怯えずに済むようになったし、会話も減ったので関係は穏やかです。

わたしはただひたすら運が悪かったんじゃないでしょうか。頑張れば頑張るほどから回るという特性を持ってしまっていることも含めて。

今は、人生の末期にいるという気がしていて、ずっと死ぬのを待っている状態です。

別に家庭環境も悪くなかった。父が生きてた頃はいろんなところに家族で行きました。楽しかった。

小さい頃、町内会で子供キャンプ会があって、それに参加したのですが、夜寝る段になって心細くなって荷物をまとめて家に飛び帰ったことがあります。そのくらいわたしにとって「家」は安全地帯だった。たぶん機能不全なんかではなかった。

全部運が悪かったんです。母ではなく相性が悪かったんです。

ほんとに何かが少し違えば「この私」ではない子供が生まれていて、そうすればその子とはもっとうまく母との関係も回ったかもしれません。

わたしは母に言われたことを決して忘れませんが、母にしてみれば子供が「この私」でなければそんなこと言わずに済んだのかもしれない。運が悪かったんです、きっと。

「この私」でなければ今までどのくらいのことがうまく回ったかと思うとつらい。わたしがわたしであったせいで、たくさんのことが台無しになった。関わってきた人たちには申し訳ないばかりです。

きっと母は毒親じゃない。

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