43.許してない
本当は、今までわたしを脅かしてきたものを何ひとつ許してないのかもしれない、と気がつきました。
小学校でいじめられたこと、親と先生が仲介してそのいじめっこと仲直りしなさいと言われ謝ったら「なんでおまえが謝るんだ!」と母に怒られたこと、どうしようもない事情を弁解もさせてもらえずハブられたこと、いじめっこと同じ中学同じクラスになっておとなげないからと思って何事もなかったように仲良くしたこと、お気に入りの人形を母が勝手に貸して台無しにされたこと、突然わたしを嫌った親友、理由がわからないから怖くてでも怖くないふりをして笑ったこと、その子がただ心配で放課後祈るように待ったこと、高校に上がって再会したとき無視されたこと、一緒に登校していた子たちが地味にわたしを見下していたこと、わたしが邪魔なのに言えずにいたらしいこと、わたしの机に悪口を書いたやつ、部活のことで泣くほど悩んでいたこと、それを誰も取り合ってくれなかったこと、みんなの前で「ひどい癖字だな」と言われたこと、部活を辞めるときわたしだけ引き止められなかったこと、部員たちの話し声笑い声がすべて悪口に聞こえたこと、あまりにしんどくて学校に行けずにいたことを母は機嫌を悪くしてため息をついたのに近所の子の不登校には同情したこと、きりがない。
怖くてわけがわからなくなって車道に吸い込まれそうでその場から動けなくなって、怖くて怖くてどう動けばいいのかもわからなくて、でも誰も助けてくれなかった。
全部過ぎたことなのにいつまでも引きずるのは大人げないと笑ってきたけど、子供だったんだから怒ってよかったんだよ。怒らないで傷ついてないふりして、だからなにもかも怖くなったんだよ。
今更気づいても遅い。手遅れです。だからわたしの人生はもう死ぬのを待っているだけなんです。理解を得られるかわからないですけど。
この手遅れ感をどう説明したらいいかわかりません。でももう全部終わってるんです。
母が怒るから全部笑うことでやり過ごしてきました。他のやり方を知りません。
全部たぶん許してない。でも許す方法も知らない。わたしは憎悪にまみれた怪物みたいなものです。終わっているのです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます