16.ピアスの持つ意味
ピアスを開けました。4つ目です。これが安定したら5つ目を開けます。
軟骨にも開けたいとずっと思ってきたので、もしかしたら5つ目後、開けるかもしれません。
ピアスが好きです。
ピアスというアクセサリーが好きです。でもアクセサリーの中で最も好きなのかと言われるとちょっと首を傾げてしまいます。おそらくいちばん好きなアクセサリーはブレスレットです。
じゃあどうしてこんなにピアスにこだわるのかというと、最初からうすうす自覚があった気はするのですが、自傷の代わりです。代わりというか自傷行為そのものとしてやっているかもしれない。
初めて開けたのは高校生のときで、きっかけはご近所物語という漫画でした。主人公の実果子という女の子はたくさんピアスを開けている子で、その開ける理由をたしか母親が「あの子がピアスを開けるときは気合いを入れたいとき」というようなことを言っていたのです。それを読んで私もピアスを開けたら少しは気合いが入ってしゃっきりできるんじゃないかと思いました。高校生時代はすでにメンヘラ期で物事を自分で決断できない状態で、でもピアスを開けるという勇気のいる行動を起こすことで確かに気合いも入りそうなものだし、気分も変わるような気がしたのです。
実際気合いが入ってしゃっきりしたわけではないですが、その爽快感のようなものに私は魅了されました。
後ろめたさのない自傷でした。腕を切ったり手の甲を噛んだりするのと違って、人に見られるのを恐れる必要がない。先生に気づかれれば注意はされますがむしろ周りの生徒に舐められ下に見られるのを予防することができます。私は自分の体を傷つけたくて傷つけることができ、それなのに何も後ろめたくない。何にも引け目を感じない。私はピアスを開けることが大好きになりました。
それから1,2年の間に2つ目、3つ目と開けます。けれど私はそこでもう打ち止めだな、と思いました。正直軟骨まで開ける勇気がまだ持てなかったことと、私たちを縛りつける謎の呪いのせいです。
ピアスじゃらじゃら系のキャラじゃない。いい年していくつもピアスを開けるなんて。
年齢やキャラクターや社会というものが私たちが好きな服を着て好きなバッグを持って好きなアクセサリーをつけ、好きなぬいぐるみを抱え、ラメのたくさん乗ったつけまつげをつけたり、好きなメイクをしたり、髪を好きな色に染めることを妨害します。
だから私はそれに縛られて抑えつけられたまま、3つ目を最後に今まで後ろめたい自傷を繰り返してきました。
それがここに来てどうしてか4つ目を開ける気になったのです。
どうしてだろう。自分でも具体的な理由はわかりません。TLで好きな格好をすることでどうして文句を言われなきゃならないんだという言説をよく見るようになって、それに感化されたのかもしれません。
私にも今、好きな格好をして好きな髪色、髪型にして、好きなメイクをすることになぜ文句を言われなければならないのか、何歳だろうと誰にも関係ないだろうという怒りのようなものが確かにあります。
だからきっとそのせいでしょう。この4つ目のホールは。5つ目用のピアッサーも用意してあるし、それを開けてしまったらもう耳たぶに開けるところは残らないので、次は軟骨ですね。
ピアスをつけるのはもちろん大好きです。一度にいろんなピアスをいろいろ組み合わせてつけられるのは楽しい。そのために私は明るい健全な自傷をすることができるんです。
一般的に耳にたくさん穴の開いている人間は少なくともウェルカムされにくいことはわかります。わかりますけど、どうせ穴が開いていなくたって私は歓迎されるような人間ではもともとないのだから関係なかった。
私はピアスが好きです。
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