9.黒歴史の1ページ

 全体的に私が被害者である感と辛気臭い話題が続いたので、私が加害者というかやらかした話でもしようかなと思います。ネタ切れ気味です。


 やっぱり人生最大のやらかしは高校時代の告白事件かと思います。恋愛感情を抱いていない人に告白をして振られるという意味のわからない話です。首をかしげる音が聞こえる……

 なぜそんなことになったのかというと、偏に私が自分自身の感情や気持ちを全く信じていなかったからというのが原因です。

 女子高生私には、他クラスにかわいいと思っている男の子がいました。顔はかわいいタイプでスタイルも薄っぺらい感じの私好みの人で、見かけるたび内心「ラッキー今日もかわいいイェーイ」とにやにやしていました。それは憧れですらなく完全にファンというか、実際にお近づきになりたいとさえ思っていなくて、見かけたら目の保養になり心が潤いラッキー、というかるーいものでした。昔からジャニーズ好きということもあって、感覚的にはジャニを見るのに近かったと思います。何気なく見たテレビにジャニが出ていると「あ!」と嬉しくなって、にやにやするやつです。

 ですがなんやかんやとあった末、成り行きで彼と同じ部活に所属することになってから事は変わってきます。

 女子の少ない部だったので必然的に女子同士固まって仲は深くなっていくのですが、私はその中でもずっと彼をかわいいかわいい、癒やされるサイコーと公言していました。もちろん彼には伝わらないようにですが。テレビの向こうのジャニーズを見るジャニオタと同じでした。

 けれどもそこは女子高生、同級生の仲間も、特に先輩がたもふつうに恋愛感情の発露と思ったようです。あの頃の私は気付いていませんが、リア充女子に紛れたオタクだったんですね、私は。彼女たちと私の間には実は深い溝がありました。

 特に先輩がたは張り切って私と彼が喋れるようにはからってくれたり、何かしらあれば彼に私をあてがったりと協力してくれました。それは先輩たちの完全なる善意であり応援で、私は先輩たちが大好きでしたから背を押されたら素直に従いました。望まれた行為をしないというのは私にとって見捨てられると同義でしたので、当然の選択でした。こういうことじゃない、これでいいのかなという違和感はずっとありましたが、自分の思うことより他人の言葉のほうが正しい。私はいつも間違ったことを思ったり感じたり、してしまったりするから、他人の言動を観察してしていいこと、悪いことのボーダーをはかっていました。他者のほうがいつも正しかった。だから私は自分の中の違和感や感情に完全に蓋をし、奥底に追いやり、知らないふりして先輩たちに喜んで従いました。先輩たちの言うことを聞いていると許されている、かろうじて好かれているような気持ちになれました。

 そんなふうに、私の彼に対する感情がジャニオタから恋愛へと変わっていきました。ずっとほんとに好きなのか?と訴える違和感を押し込めながら、みんなが言うんだしこれが恋なのか〜と浮かれてもいました。少女漫画が現実と地続きと思い込んでいた夢見がちな性格も災いして、恋する女子高生の自分に安心し酔いしれてもいました。

 そんな感じで違和感を無視し、どんどんと好きなんだ!と思い込んでいった私はついに告白することを提案されます。さすがにここでやばいという気持ちが抑えきれずに溢れてきますが、もう後に引ける状態ではありませんでした。まわりの応援も、自分の立場も恋に陶酔する夢見がちな女子高生も後退を許さなかった。

 そうして私は本当は好きでない相手に愛の告白をすることになるのでした。

 なんと言って告白すればいいのかわからなかったので、定型文として「好きです、良ければ付き合ってください」と言いました。付き合いたくなんてないのにそんなことを言っている自分を、違和感の私が冷たい呆れた視線で見ていました。

 私はもうここまでやれば充分だろうとふらふらになって倒れ込みたい気分と、女子高生として生きているという安心と、役目を果たしたような謎の達成感に包まれていました。

 当然、後日振られるのですが、いくら本気の恋愛感情ではなかったとはいえ、拒否されるのはさすがに辛く、枕を涙で濡らす日々だったのですが、この辺りからメンタルの調子が一気に悪化した感があります。同じ部の男の子たちの話し声がみんな私の悪口に聞こえ始めたり、やばかったです。

 彼に恋してるつもりでいた間は、彼の携帯の機種を調べて同じものに変えたりと気持ち悪い行為を繰り返していましたが、ストーカーとして訴えられなかったことは幸いですね!


 結局、自分の違和感くらいは信じていいという結論です。あと好きかそうでないかは素直に話してもいいということ。


 巻き込んだ彼は当然、当時私や彼のまわりにいた方々、部活のみなさんには多大なご迷惑をおかけして大変申し訳なく思っております……。願わくは私の存在などすっかり忘れて思いだすこともない人生を過ごされていることを祈っております……。


 以上、黒歴史でした!ギエピィーーーーー

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