8.国家公認


 ずっと昔から、自分の存在を許されていないと感じています。

 だから例えば人が嫌がるような仕事をするとか、みんなより余分にお金を出すとか、母の手伝いを先んじてやっておくとか、そういうことをしてやっと大丈夫だと安心できます。なんでこんなことしなきゃいけないんだろうと思いながら、こうでもしないと許されないと恐怖が追い立ててくるのです。


 私は喪女ですから、誰かに好意を抱かれたこともありませんし、ましてや好きな人に受け入れられるなんて別の世界の話みたいで現実味がありません。友人関係も希薄です。

 許しというのは他者から与えてもらうもので、そもそもその他者が私にはいない。私が私であることだけで許してはもらえない。


 精神障害年金を申請していたのですが、不支給の通知が届きました。社会、というか国にですかね。国に「あなたは生きていなくていいです」と言われた気がしました。今でもそう言われたんだと思っています。国公認の存在の不許可。一体何をすれば許してもらえるのだろう。ずっとずっと思っています。生きているだけでいいなんて大嘘です。少なくとも私は生きているだけではだめなのです。


 命。不条理なものだ。ものすごく繊細な、奇跡的なバランスのうえで成り立っているらしい。そのくせ自我まで持って。好き勝手して。結局みんな死ぬ。意味不明にもほどがある。

 昔、死んだら世界の成り立ちとか宇宙のこととか現実の不思議なことが全部わかると思い込んでいた時期がありました。けど生きてたって死んでたって謎は謎のまま、私の存在には何の意味もないまま、許されないまま終わる。

 だから人生は嫌いです。なにひとつ、思うようにならない。

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