プロピデンス学園の戦い
富山 大
ある日、ある朝、突然に
私の名前は、江口トモエ。
マンモス校フロビデンス学園で保険の先生をしています。
「あ~、暇だな~」
グ~と、背中を延ばしながら私はアクビをかみころした。
今日は暇だ。
いつもなら擦り傷だ、切り傷だと、生徒がひっきりなしに押し寄せて来るのに、今日は珍しく誰も来ない。
「平和だな~」
そう呟いた瞬間。
ドカーン
と、地響きとも、落雷とも想えない凄い爆音を耳にした。
「なに? なに? なに!?」
椅子から転げ落ちた私の耳にドタバタとけたたましい足音が届いた。
「先生、先生、トモエ先生、大変だ、大変だ、大変だ」
「どうしたの? どうしたの? どうしたの!?」
「科学部の連中が、科学部の連中が……」
「科学部の子たちがどうしたの?」
「実験で異世界から怪物を呼び出した」
「へ!?」
そうこうしてる内に怪我人が次々に運び込まれて来た。
腕が無い。
脚が無い。
顔が半分消えている。
え!? マジで!?
「先生助けて、助けてよ先生」
男子生徒が私に詰め寄る。
こんなのどうすれば・・・
考える前に身体が動いた。
学園の保健室には、オートメーション化された医療器具が設置してある。
タッチパネルと音声指示でコマンドを入力して、生徒の治療を・・・
ドカーン
衝撃に身体が震えた。
爆音で耳の奥が
キーン
と、いっている。
黒煙が充満し、焦げ臭いにおいに鼻が麻痺する。
校舎の壁が消えていた。
あちこちで火の手か上がってるのが見えた。
「ヤロウ、ふざけやがって」
男子生徒が叫んだ。
壁に開いた穴から男子生徒が飛び出す。
ハンドメイドのパワードスーツを呼び出して装着するのが見えた。
「無茶よ、そんな装備で戦えないわよ」
私が叫ぶと振り向いて親指を立てて見せた。
うわぉ、格好良い。
「トモエ先生助けて」
振り向いた私の眼に、怪我をした生徒の姿が飛び込んで来た。
次々に運び込まれて来る。
一人じゃ手に負えない。
「そこ」
私は指さした。
「泣いてないで手伝いなさい」
壁に寄りかかって泣いていた女生徒が駆け寄って来た。
「ここ、ここを押さえて」
止血し、縫合し、包帯を巻く。
輸血をして、抗生物質を投与して。
「トモエ先生、ベッドがもう足りない」
「運動部。倉庫から布団を運んで来なさい」
「押忍」
「防衛研究会、彼らを護衛して」
「先生、消毒液が……」
「お湯を沸かして煮沸するのよ」
「でも、水が出ません」
「水道管が破れてんだから、そこら中に溢れてるでしょ」
「火も」
「そこらじゅうでボウボウ燃えてるわよ。キャンプ同好会
土木研究会がトーチカを築き、保健室は
防衛研究会とパワードスーツ友の会が防衛線を築き、敵の侵攻を食い止めている。
体育館では運動部同盟戦線が決起し、クラブ棟では科学部を筆頭とした文化部連合が敵の弱点を突き止めようと奮闘している。
私は保健室で陣頭指揮を執りながら、虎視眈々と捲土重来を待つ。
昨日までの私は、暇を持て余す保険医だった。
でも、いまはナイチンゲールで、マザーテレサで、白衣を纏ったジャンヌダルクだ。
私たちは、必ず学園を取り戻す。
プロピデンス学園の戦い 富山 大 @Dice-K
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