第二章 真実を探求する者 4 

「ここね……」


 私は陽太君と別れた後、謎の声に導かれながら視聴覚室の前まで来ていた。

 そして、私は視聴覚室に入ると声の持ち主を探し始める。


「ねぇ、何処に居るの?」

『貴方は……』


 私は言葉に答えたのか一番前のテレビ画面が光りだす。

 陽太君の話を聞いてなかったら驚いていたと思う。


「私は神崎 美鈴。あなたの声が聞こえてここまで来たの」

『そうでしたか……私の助け呼ぶ声を聞いて……』


 テレビ画面は誰かが話す度にピカピカと光る。

 ここら辺も陽太君に聞いたからあまり驚かなかった。

 普通に話せる辺り何処かの機器に書かれていた言語データを解読して話せるようになったんだと思う。


「ねぇ、あなたはグレンの仲間なの?」

『グレン……この星に居るのですか?』

「うん。今はこの星で仲間を探しているの」

『そうですか……この星で仲間を探しているのですね』


 どうやらグレンの仲間みたい。

 だったら私にやれる事は一つね。


「貴方をグレンの所に連れてってあげるからこのスマホの中に入ってよ」


 私は鞄からスマホを取り出してテレビ画面に向ける。


『いいのですか? 見ず知らずの私を……』

「うん。私が出来る事はこのぐらいしかできないから」

『……分かりました。私をグレンの元へ連れて行ってください』


 誰かがそう言った後テレビ画面は一段と光りだして私は光を遮るために目を閉じる。

 その時に一瞬、鳥のような影が見えた。

 段々と眩しさが無くなると私はスマホ画面を見る。


「それが貴方の姿なのね」


 スマホ画面に映っていた姿はとても綺麗な翡翠色の鳥だった。


『私の名前はウィンド・フェニックスのエメラです。美鈴様、それじゃグレンの所までお願いしますね』

「うん。任して。あっ私の事は美鈴でいいよ。様付けは無しでお願い」

「はい、分かりました。美鈴」


 お互いの紹介した所で私はグレンの所に連れて行こうとする。

 突然、ブルっとスマホが震える。


「ん? 何だろ?」


 私は何が起きたのか調べるためにスマホを操作する。

 スマホを調べた結果、知らないアドレスのメールが一軒来ていた。

 そのまま私はメールを開く。


「これって——」


 私はそのメールを見て驚きを隠せなかった。


※※※


「くっ……くっそぅう……!」


 俺は大蛇から発せられた電気を浴びながら押さえ込んでいた。


『ヨウタ! もういい! 離せ!』

「だが俺が離したら後ろのあいつがぁ!」


 そう。俺の後ろにはまだ男子生徒が怯えながら座り込んでいた。


『だがこのままあいつの十万ボルトを喰らってたらお前の体が持たない!』

「分かっているぅ!」


 何か……何か方法はないのか。

 今の俺はグレンの能力が使える。

 だったら何かこの状況を突破できる方法があるはずだ。

 大蛇を連れて空を飛ぶ。

 いや、こいつを持ち上げるほどの飛ぶ力はない。

 だったらさっきみたいに何処かに投げる。

 いや今は押さえ込んでいるので精一杯だから投げるのは無理だ。

 そもそもドラゴンは何ができるんだ?

 神話や小説の世界では空を飛んで炎を吐く事が出来る生物だ。

 ……ん? 炎を吐く?


「グレン、炎を吐く事できるかぁ!?」

『炎を吐く事は普通に出来るぞ!』

「よし……今から炎を吐くからサポートしてくれぃ!」

『お安い御用だ! よし大きく息を吸い込め!』


 俺はグレンの指示通りに大きく息を吸い込む。

 鎧みたいなこの体に出来るかは心配だが今はやるしかない!


『よし今だ! 息を吐け!』


 俺はグレンの合図ともに息を吐く。

 すると口の所から炎を吐き出す。

 吐き出した炎は大蛇の体に直撃する。


「————!」

『よし、効いている!』


 大蛇は俺が吐き出している炎で苦しんでいる。

 そして、俺はその隙に大蛇の体を押さえ込んでいた手を離す。


『ヨウタ、今だ!』


 俺は炎を吐く事を辞めて拳で大蛇を思いっきり殴る。

 殴った勢いで大蛇は吹っ飛ばされて地面を転がる。


「おい、そこの男子生徒!」

「ははいぃ!」


 俺は臨戦態勢を整えながら後ろに居る男子生徒に話しかける。


「死にたくなかったら今の内に逃げろ……お前が逃げる間、あいつを抑え込んでいるからな」

「あ、あの……」

「早く行け!」

「はいぃ!」


 俺の合図ともに男子生徒は走り出した。


『これで大丈夫だな』

「あぁ……後はこいつだけだ」


 男子生徒の駆けていく音が段々と遠くなっていくのを聞きながら俺は大蛇を睨んでいる。

 大蛇も警戒しているのか無理に襲ってこない。

 暴走していてもこういう危機管理は出来ているから厄介だな。


『だがどうする。こいつは体中に電気を流すことが出来るから接近戦は無理だ』


 確かにグレンが言う通り接近戦だとまた体中に電気を流されてしまう。

 これ以上大蛇の攻撃を受けたらもう体が持たない。

 ここは安全に炎を吐き続けてやるしかないか……。


「陽太君!」

「えっ? 神崎?」『ミスズ?』


 大蛇の後ろから神崎が現れる。


「神崎、何やってるんだ! 早く逃げろぉ!」

「大丈夫だよ! 任して!」


 神崎はそう言った後、何やら手に持っていたスマホを操作し始めた。

 そして、大蛇は神崎に気が付いたのか襲い掛かろうとしていた。


「神崎ぃ!」


 俺は急いで神崎の方へと駆け出した。

 だが、このままだと間に合わない事ぐらい俺にも分かってしまった。


「————!」

「神崎ぃ!」『ミスズ!』


 俺とグレンがもう駄目だと思ったその時だった。


「エメラ、行くよ」

『はい、美鈴』


 神崎が勢いよくスマホ画面に触れると突然、強い向かい風が吹き始める。

 大蛇は向かい風のせいで動けない状態になった。

 だが、俺も向かい風のせいで一歩も動けなかった状態になってしまい、視界を守るために手で覆う。


「一体何が!?」

『ヨウタ、ミスズの体が光ってる!?』

「えっ?」


 視界を凝らしながら俺は神崎を見る。

 グレンの言う通り神崎の体は光っていた。


『これは……』

「まさか!?」


 俺たちの考えている事は的中した。


『UNITE ON! WIND PHOENIX!』


 スマホの電子音声が聞こえてきて向かい風が段々と弱まっていく。

 それと同時に神崎の体から段々と光が無くなっていき神崎の姿が露になる。

 頭は翡翠の色になり髪も少し伸びてロング。口元にマスクみたいなもの。手足は黄色い鳥の鉤爪。背中には髪と同じ翡翠色の翼。全体的に動きやすい姿になっていた。


『——ウタ! ヨウタ!』

「はっ!?」

『ヨウタどうしたんだ?』

「何でもない!」


 こんな状況なのに俺は神崎の姿に見とれていた事に気付き顔が赤くなる。


『しかし、なんでミスズが?』

「分からない……」


 俺とグレンが困惑していると神崎が背中の翼を広げて空を飛ぶ。

 神崎と融合していたモンスターがサポートしてくれてるのか安定して空を飛んでいる。

 そして、大蛇の攻撃が届かない場所まで飛ぶと何やら翼の羽ばたきをこまめにやり始める。


「そりゃ!」


 掛け声ともに大蛇に向けて翼を大きく羽ばたかせる。

 すると強風と共に多くの羽が飛び出て、大蛇の体をかすめていく。


「————!」

「まだまだぁ!」


 神崎は手を緩めずに掛け声ともに同じ攻撃を繰り返す。

 そして、段々と大蛇は弱っていき、ついに地面に倒れた。

 俺はただ単に神崎の攻撃を見ているしか出来なかった。


「凄い……」

「とどめ、いっくよぉ!」


 神崎はそう言った後に大蛇に向かって急降下していく。


『まずいッ!』

「えっ?」


 グレンがそう言った瞬間、大蛇はそれを待っていたかのように急に起き上がる。

 そして、急降下してきた神崎に体を巻き付け、青いチューブが光り出した瞬間に体から電気を発する。


「きゃああああぁぁぁ——!」

「神崎ぃ——!」


 神崎は大蛇の電気で苦しめられている。

 何とか脱出しようと試みているが出来ないようだ。


「くそっ! どうしたらいいんだ!?」

『ヨウタ落ち着け! 何か手があるはずだ!』


 このままだと神崎が危ないのは確かだ。

 だが俺もこれ以上あいつの攻撃を受けてたら体が持たない。

 どうする……。

 せめてあいつの電気を通さない体になれば大丈夫なんだが……。

 ん……?

 電気を通さない体……?


『UNITE OFF』


 俺はグレンとの融合を解除する。


『ヨウタ、どうしたんだ!? いきなり融合を解除して!?』


 俺はグレンとの融合を解除した後、手に持っていたスマホを見る。

 スマホ画面はまだアプリが開かれていた状態になっていた。

 そして、グレンの左右に矢印。


「グレン、ちょっとごめん」

「えっ? あっ、ちょっ——」


 俺は指でグレンをスライドさせる。

 すると昨日ダウンロードされた恐竜がスマホ画面に現れた。


「やっぱり……これだったら行ける!」


 俺はそのままUNITE ONの文字を押す。

 そして、俺は光に覆われていく。


『UNITE ON! ROOK TYRAANNO!』


 電子音声ともに光が段々と無くなっていく。

 顔はティラノサウルスをモチーフにした鎧兜。両肩には岩石のような鱗。手足は人間の手足だが爪が伸びている。そして最後に尻には長い尻尾らしきもの。俺は全体的にとげとげしい姿になった。


『何!? ティラノとも融合出来るのか!?』


 グレンが俺の中で叫んでいる。

 どうやらグレンの意識はほかの奴と融合してもあるようだ。


「行くぞ!」


 俺は掛け声ともに大蛇の元へ駆け出す。

 グレンとの融合に比べて体が重いがそんな事を気にする状況ではない。

 手の届く位置にたどり着くと俺は必死に神崎を助けるようとする。

 そして、大蛇の体を掴んだ瞬間、俺の体にも電気が浴びせられた。


『ヨウタ!』

「……かねぇ」

『えっ?』

「効かねぇよ!」


 俺はそのまま神崎を助けようと大蛇の体を掴んで緩める。


「神崎ぃ! 今だ!」

「うん!」


 俺の合図ともに神崎は翼を広げて羽ばたかせる。

 そして、空中へと逃げていった。

 大蛇はまた神崎を捕まえようとしたが俺が体を引っ張っていて届かなかった。


「よし、後はお前だけだ!」


 俺はそう言いながら両肩の岩石のような鱗を光らせながら大蛇を押さえている。

 そして……。


「喰らいやがれ!」


 俺の合図ともに両肩から勢いよく岩石が発射される。

 その反動で俺は大蛇の体を離してすこし後ろに下がる。

 大蛇に当たると岩石は自然と消えていく。

 そして、大蛇は地面に倒れて昨日の恐竜のように光の塊になった。


『終わったな……』

「あぁ……」

『だけど、ヨウタ。何でこいつの電気が効かなかったんだ?』

「電気は石や岩を通さない。だったら、岩の体を持つ恐竜と融合すれば電気は効かないんじゃないかと思ったんだ」

『なるほどな』

「陽太君!」


 戦いが終わると神崎から空中から降りてくる。


「神崎あの……」

「ちょっと待って! まずはこの子の回収! 私が回収していい?」

「あぁうん……」


 神崎が光の塊に触れると体に吸収されていく。


「ふぅ、これでOKね」


 大蛇のデータがダウンロード完了したのか神崎はやり切った顔になる。


「じゃあ神崎。なんで——」

「あっ、その前に屋上に飛んで移動しよう。そろそろ騒ぎを聞きつけて人が集まりそうだから。鞄は体育館の隅に置いてあるから拾ってから行こう」

「お、おう……」


 その後、俺はグレンと融合して体育館の隅に置いてある鞄を持つ。

 そして、翼を広げて神崎ともに学校の屋上へと飛んでいった。

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