第二章 真実を探求する者 3

「これを見て」


 神崎はスマホを操作して俺とグレンに見せる。

 そこに表示されていったのは昨日も見せられた情報サイト『愚痴るんです』の記事だった。


『この記事って朝の停電の事か?』

「うん、そうだよ」


 神崎のスマホを表示されていた記事はグレンの言う通り朝近くで起きた停電の事だった。


「んで、気になる事って何だ?」

「ここの部分を見て」


 神崎が指を指しながら俺とグレンに見せる。

 そこには詳しく停電の事が書いてあった。


『何々……朝の停電は一瞬だったがまるで蛇が通ったようにくねくねと停電していた事が判明。しかも停電は一気に起きた訳ではなく一軒一軒起き一部の電子機器類が壊れていた事が判明した』

「これって……」

「そう。もしかしたらグレンの仲間が通ったのかもしれない」


 神崎は俺が考えている事を口に出していった。

 もしこの情報が本当ならグレンの仲間の仕業かもしれない。


「グレン、どうなんだ?」

『可能性はある。だが、もしこいつが俺の仲間のせいだったとしても何処に行ったかは分からない』

「それなら大丈夫だよ。私、この停電の事が気になって色んな人に聞いたの。そしたらこの学校の近くまで停電が起きたらしいの」


 神崎が得意げにそう言うと俺は改めて彼女の情報網は頼もしいと思い始める。

 これほど頼もしいと思う奴はそうそう居ない。


「じゃあ、この近くに居るって事か?」

「多分ね」


 神崎が俺とグレンに予想を言ったその時だった。


「————!」

「「『!?』」」


 何かの叫び声が校庭の方から聞こえてきた。


「何だ!?」


 俺と神崎は校庭の方を見る。

 すると長くて大きい黒い物体が校庭で暴れていた。


「あれはグレンの仲間か!?」

『分からない! だが、このままにしていると被害が出る!』


 部活で校庭を使っていた生徒たちと先生たちが黒い物体から逃げ惑っていた。


『ヨウタ! 被害が出る前に融合だ!』

「あぁ、分かった!」


 俺はスマホからグレンと融合出来るあのアプリを開く。

 アプリを開くとグレンの左右に矢印が付いている事に気付く。


「これは……?」

「陽太君、どうしたの? なんかあったの?」


 俺がスマホ画面を見ていると神崎が不安そうに聞いてきた。


「いや、何でもない!」


 俺はそのままUNITE ONの文字を押す。


『UNITE ON! BURST DORAGON!』


 スマホの電子音声が聞こえてきて俺とグレンは融合した。


「神崎、すまないが俺の鞄を持って避難してくれ! 俺は飛んであいつの所に行く!」

「うん、分かったよ」


 俺は神崎に鞄を持たせた後、翼を広げて飛び始める。

 そして、黒い物体の元へ飛んでいく。


「陽太君、気を付けてね……」

『……たす……て』

「えっ?」

『たす……て……くだ……い』

「誰かが呼んでいる……?」


※※※


「あいつ、何処に行った!?」


 俺が校庭の上空まで飛ぶとあの黒い物体は何処にも居なかった。


『ヨウタ、あそこだ!』

「何処だ!?」

『あのデカい建物の近くだ!』

「デカい建物……体育館か!」


 俺はすぐに体育館の方を向く。

 すると黒い物体はくねくねと移動していた。

 そして、何故か周りを見ていた。


「あいつ、何をやってるんだ?」

『何かを探しているようだが……』

「何を探しているんだ……?」


 上空で黒い物体を観察していると黒い物体は体育館の裏へと回る。


「まずい! 見失う!」

「うわあああああぁぁぁ!?」

「!?」


 黒い物体を追いかけて俺は体育館の裏へと回る。

 すると、誰かの叫び声が聞こえてきた。


「なんだ!?」

『ヨウタ! 黒い物体の目の前に人が!』

「何!?」


 俺は黒い物体の奥を見る。

 するとグレンの言う通り黒い物体の目の前に小柄の男子生徒一人が座り込んでいた。


『ヨウタ! このままだとあの子が危ない!』

「分かっている!」


 俺は急いで翼をたたみながら地面に降りる。

 そして、黒い物体に突っ込んで後ろから体を掴んだ。


「おぉぉぉりぃぃぃやぁぁぁ!」


 掛け声とともに黒い物体を後ろへと投げた。

 黒い物体はそのまま地面に落ちて周りに土煙が上がる。


「はやく逃げろ!」


 俺は男子生徒の方を向かずに逃げるように言う。


「な、何が起きているのですか? まさか僕の妄想?」


 男子生徒は今の状況を理解できずに自分の妄想だと言い始める。


「馬鹿! これは現実だ! とにかく逃げろ!」

「……で、でも……足が思い通りに動かなくて……」


 俺が逃げるように言うがどうやら男子生徒の足は恐怖心で思い通りに動けなくなっているようだ。


「仕方ない! 俺がお前を担いで避難をさせる!」


 俺が男子生徒の向いて担ごうとしたその時だった。


『ヨウタ、来るぞ!』


 グレンの叫び声とともに砂煙の中から黒い物体がこちらに突っ込んでくる。


「やばっ!」


 すぐに俺は黒い物体の方を向き受け止める。


「くっ!」


 黒い物体が突撃した反動で俺は少しだけ後ろに下がる。

 幸い男子生徒の所までは下がらなかったが俺はこの黒い物体を抑え込むので精一杯になった。


『ヨウタ、これからどうする!?』

「どうするって言われても今はこいつを抑え込むので精一杯だ……!」


 俺がグレンと話していると黒い物体の色彩が段々とはっきりとしていく。

 そして、姿も変わっていく。


『こいつは……』

「グレン、知っているのか!?」

『あぁ、こいつはエレクトリック・スネーク……俺の仲間だ!』


 グレンが仲間だと言った後、俺は改めて今押さえている奴を見る。

 グレンの仲間は胴体に青いチューブのようなものがある大蛇だった。

 すると青いチューブの部分が光りだす。


『まずい! ヨウタ早く離れろ!』

「えっ?」

「————!」


 大蛇は叫び声をあげると体から青白い電気を発する。


『うわあああああぁぁぁ——!』

「ヨウタぁぁぁ——!」


 大蛇を押さえている俺はそのまま電気を直に浴びてしまった。

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