第一章 未知との遭遇 1

「起きなさい! 英語で言うとRise and shine!」


 二十代後半の女性の声ともに俺、天道寺 陽太(てんどうじ ようた)は頭を何かで殴られた。

 頭への痛みがじわじわとくる中で俺は今、自分が置かれている状況を把握していない。

 確か俺は変な夢を見ていたんだ。えっと、どんな夢だったっけ……。


「Mr.天道寺、聞いているのですか? 英語で言うとAre you litening?」


 ……今は夢の事は置いといておこう。

 今の状況を確認しよう。今まで夢を見ていたという事はつまり寝ていたという事。それで今はどう見ても学校の授業中。そして、学校の授業中に寝ていたという事は先生に怒られる原因になる。最後にじわじわくる頭の痛みは予想だが英語教師の高橋先生の教科書で殴られた。

 なるほど、分かった。つまり俺は授業中に寝ていた事が高橋先生にばれて、なかなか起きないから先生の教科書で殴られたという事か。

 高橋先生が教科書で殴るのもどうかと思うが授業中に寝ていた俺にも非がある。

 さて、この状況を少しでも打破するために次にやる事は決まっている。


「すみません。高橋先生……」


 少し頭を下げながら高橋先生に謝った。

 それを見た高橋先生は少しため息をついた後、


「放課後、職員室に来なさい。後でちゃんとお説教をします」


 と言った後、前にある教卓へと戻っていき授業を再開した。

 一応、今の状況はなんとか打破できたが放課後のお説教は嫌だな……。


(まーた、天道寺君……職員室に呼びだされているよ)

(これであいつ、何度目だ? この前も三年の先輩たちと揉め事を起こして職員室に行っていたぞ)

(うっそっ? その話、初めて聞いたんだけど? んで、どうなったの?)

(三年の先輩たちには怪我はなかったみたいだが、天道寺の奴、いきなり殴りかかろうとしていたらしいぞ)

(うっわぁ……あいつ、まじ不良じゃん)


 俺が放課後の事で鬱になっている中でクラスメイト達が自分の悪い噂をこそこそとしていた。

 自分の悪い噂がされる事はこれが初めてではなかった。

 俺が通っている高校、私立筑羽高校は関東地方に属する高校である。ちなみに男子の制服は赤のネクタイに黒のブレザー。下は灰色のスラックス。女子は赤のリボンに黒のブレザー。下は黒と灰色のチェック柄のスカートである。ここら辺の高校にしては偏差値が平均的ではあるが家から近いという事で俺は今年から入学した。

 入学したのはいいが俺は元から目つきが悪く不愛想だから、入学初日から周りに不良扱いを受けていた。

 まぁ、確かに俺は中学の時から学校は遅刻するし授業中は寝てしまうし不良扱いを受けていても仕方ないと言えば仕方ないと思う。

 不良扱いが決定的になったのはさっき、クラスメイトの誰かが言っていた三年の先輩たちの件だ。

 だが、あの件に対して俺は悪くない。

 たまたまその日の前日に流星群があって、その流星群を見るために俺は徹夜をしていた。いつもより多くの流星群が見れて、興奮が収まらなかったのは覚えている。けれど、そのせいで寝不足になり目つきが普段の三割増し悪くなっていたらしく、その目つきで三年の先輩たちを見ていたら何を勘違いしたのか自分たちを睨みつけてきたといちゃもんをつけ、揉め事になった。

 その現場を先生たちに見られ、俺と三年の先輩たちは職員室に連れていかれた。

 俺は職員室で俺は先生たちと三年の先輩たちに事情説明をして、何とか誤解を解いた。

 あの時、目つきのせいで誤解を解くのもかなりの時間がかかったのはよく覚えている。

 それから数日後、さっきクラスメイトの誰かが言っていたようなありもしない噂が流れ始めた。

 その結果、俺は今ではこの高校の一番の不良という事になっている。

 全く俺は目つきが悪い事と不愛想以外星を眺めているのが好きな高校生だ。髪だって茶髪のミディアムだからそこまで不良のように見えないはずだ。

 まぁ、もうどうでもいいけどよ……。

 とりあえず今は真面目に授業を受ける事にするか。

 真面目な行動をしていればいつか俺が不良じゃないと気付いてくれる日もそう遠くないはずだ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る