『初恵と衣装合わせ』

「今回の和風しょう、どうかな」

「私は、すそんでしまいそうだけども……。まあ、こういうシルエットがいいな」

 つきが尋ねたのは、はつさつえいしょうはつには長いスカートの和ロリータ。「絵画の中の人物」がテーマなので、色味はひかえめで格好良くも見える。

「色味はどう……?」

だいじょうだよ。いいね」

「良かった。ストッパーにそうがいたから……」

 目をそむけながら苦笑いするつきに、ようすけと相当盛り上がったのだろうと察したはつそうのファインプレーに「後で何かおごるか……」と心の中で感謝した。

 好きなことにぱしるのはいいのだが、いっしょに作業させると派手になりがちな二人だ。時々という程度には苦言をていすることもあるのだ。

「まだ勉強中のデザインだから、何か気になる部分があれば言ってね」

「ああ。分かった」

 かっいい服装が好きなはつは、ようすけが言うようにれいな服装を好む。そこに、「かっいい」だとか「わいい」のちがいはあるが、こうして好みをんでくれる。女性らしい格好も、別にきらいではなくて、「男性っぽさ」を求められていたから、そうしていたに過ぎない。

 じゅんのプロポーズも女性らしい服装指定だったことを、こういうしょうを着るたびに思いだし、「良い家族を持ったな」とそっとつぶやく。

「お母さんのおかげで、ぼくらもいるからね」

「聞かれてたか……ずかしいな。でも、やさしいむすで良かった」

 そう『はんげき』してみると、つきも照れくさそうに笑い、つられてはつがおになった。

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