『初恵と親友』

――カランカラン。

 休みの昼下がりに、はつの表情もほころぶ。

百合ゆりじゃないか、おつかさま

「おつかさま

 森宮百合ゆりそうゆいの母親で、しんの妻でもある。「いつもふわふわしてる」というはつの評にしんですら同意するにゅうふん楠家くすのきけの子供たちもよくなついていて、小さいころめんどうを見てもらっていた。

「今日は何が良い?」

「ミルクティーをお願い」

 そこに、とことこと足音が鳴る。

「こんにちはー」

「こんにちは。今日もわいいわね」

「えへへ」

 あいさつに来ると毎回身なりをめるので、ようすけがいそいそとあいさつに来て、いつものように百合ゆりめる。

 そのようすけは「百合ゆりおばさんって、ゆったりした服を着たら、おきさきさまみたい」としょうを着せたいと言う。百合ゆりの親友としては、見たい気持ちが半分くらいあるが、止めておきたい気持ちも、もう半分。はつ以外の親たちは止める気が無さそうなので複雑だ。

 そう思い返していると、初恵の表情を見て百合が微笑んだ。

はつは、今日も色々考えていそうね」

「……参ったな、顔に出てたか?」

「ふふっ」

 時折、そんな彼女もちゃんと周りを見ているのだと気付かされて、「この人には頭が上がらないな」と思うのであった。

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