喫茶店フォレスタ《本編》

『盾と共通点』

「創（そう）だ。おはよー」

「おはよ」

　次男の美（み）月（つき）が、アトリエでしていた朝の作業から戻（もど）ってきた。ピークを過ぎた時間くらいの、盾（じゆん）と美（み）月（つき）、そして創（そう）の三人がいつものメンバーだ。時折、そこに流（る）海（み）と結（ゆい）も加わる。

「作品作りは、どう」

「おかげさまで順調だよ」

　それぞれ年（ねん）齢（れい）はバラバラだが、真面目で気が合うからか、よくこの組み合わせになる。熱心に勉強をし、特に好きなことには没（ぼつ）頭（とう）するタイプ同士、黙（もく）々（もく）と作業をしながら、時々隣（となり）の「有識者」に尋（たず）ねることもある。

　その様子には、明るく話しかける陽（よう）介（すけ）も空気を読んで、小声で「何か飲み物、いる？」と声をかけるようになった。そうした雰（ふん）囲（い）気（き）をよく見ているからか、創（そう）と一（いつ）緒（しよ）に来始めた頃の流（る）海（み）が「あの大人しいウェイトレスさん」と呼んで、普段の陽（よう）介（すけ）を知っている創（そう）がお茶を吹（ふ）き出（だ）したこともある。

「美（み）月（つき）さん、今日は何を飲みますか」

「じゃあ、アイスティーで」

　美（み）月（つき）も、我（わ）が家（や）はアイデア、創（そう）を含（ふく）めた森宮家は知識の人達だ、と言う。クリエイティブなことも、土台となる「何か」を知らないと登っていけないものだよね、と。それを横で聞いていた創（そう）は「知識……だけだと、常識に、囚（とら）われがち」と苦笑いしていた。

　縁（えん）結（むす）びの神社を持つ森宮家も、数年前の楠家（くすのきけ）のように常識がひっくり返っている最中だと言う。今後を任されている創（そう）は「覚えることが、気を遣（つか）うことが、多い」と言い、二つの家族を見てきた盾（じゆん）も「毎日が勉強です」と頷いた。