　休日朝の客が流れ始めてしばらくして、親友の子供達（たち）が遊びに来た。

「こんにちはー」

「……こんにちは」

「お邪（じや）魔（ま）します」

「いらっしゃいませ、お三方」

　末っ子の森宮結と、長男の創（そう）、そして創（そう）の婚（こん）約（やく）者（しや）の流（る）海（み）だ。結はしっかり者の一方で末っ子らしく甘（あま）え上手で、こうして上の子を誘（さそ）って遊びに来ることが多い。楠家（くすのきけ）も強い個性を持つが、森宮家の中でも創（そう）は普（ふ）段（だん）着（ぎ）に和服を着てくるくらいにはブレない個性を持つ。そう言った意味で似たもの同士なのか、陽（よう）介（すけ）とも交友が深い。

「注文はどうなさいますか」

「エスプレッソで……今月の、ブレンド」

「私は……カフェオレでお願いします」

「私もそれでっ」

　大人しいふたりと、はきはきした妹で和服が並ぶ。結がこのふたりと遊びに来るときは普（ふ）段（だん）の洋服ではなく、和服で来る。その理由を聞いてみると、「着付けも楽しいし、普（ふ）段（だん）から出来るおしゃれだから」と嬉（うれ）しそうに語ってくれた。陽（よう）介（すけ）が創（そう）に「好きなものを共有したい」と服（ふく）飾（しよく）の話題に誘（さそ）ったのを、どちらかに教えられたのだろうか。先（せん）陣（じん）を切って自己を貫（つらぬ）く背中を見ることが出来るのは、末っ子の特権だ。そう思う事が出来るのは、親ならではの特権かもしれない。京子もそうした姿を見て、妻である初（はつ）恵（え）の背中を見て前向きに育っているのが何よりだ。