『美月と裁縫』

 しよう部屋でようすけしようの製作をしていると、ようすけが手を止めて話しかけてきた。

「ほんと家庭科やっててよかったよね」

「確かに」

 それに美月も答える。今時でもまだ、「女子が得意とされる教科」が得意だったりするとからかわれたものだ。

「それならばけてしまおう」と今に至ったのがようすけだ。美月はデザインの方が得意だが、チャコペンでに目印をつけたりと、服の構造に関することは重視して勉強した。

 ようすけが着たい服ならわいいものも当然考える。森宮家にも個性的な面々がいるので、助言やレビューを受けることもある。じゆうじつした「勉強」のかんきようがここにあることは、美月にはとてもうれしい。

 引き立て役なら進んでやりたい、という美月のスタンスは父のじゅんえいきようだろう。ようすけは堂々とした母のえいきようだ。デザインをすることで、ようすけもそうだが、周囲の人も感心してくれる。着ることもけられるなら、作る方もそうだ。


「……美月。布地、足りる?」

「あっ、これ無理そう」

 夢中になっていたら、少し大きくちバサミを入れてしまった。よし、と立ち上がったようすけえを始めた。

「布地がなければ服はできないよー。ほら、えたえた」

 ふんふん、とごげんようすけに乗せられ、美月もクローゼットを開ける。

「モノトーンにグレーのポーチとかどうかなー」

 兄弟だからなおさらというべきか、勝手知ったる仲だ。線が細いのもあって、どうしても女の子っぽく見られてしまうので、自分に色を合わせるのはようすけにも相談する。

 すると、ごげんで好みに合わせてくれる。その結果、二人並ぶとカップルにちがわれることもある。ようすけはノリノリで女の子としてうが、美月にはありがたさ半分であり、もう半分はというと、これはこれで苦笑いしてしまうのだった。

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