『美月と買い出し』

「さて。お母さん、晩ご飯の買い出しに行ってくるね」

「うん、たのんだぞ」

 はつが店番をしていることがほとんどで、じゅんや子供たちが当番制で買い物をしている。今日は美月の担当だ。

 中でも美月は他の家族のリクエストを中心にしてこんだてを考えるので、とても喜ばれている。

「どうしようかな。リクエストのハンバーグはソースも決めたけど、問題は京ちゃんがていこうなく食べてくれる付け合わせだ」

 歯応えのある野菜が好きな京子のために、にんじんなどをそろえる。バターソテーにしておけばきっと喜ぶはず。そこに、同い年くらいの学生がニヤニヤしながら寄ってくる。

「おーや、美月『ちゃん』?」


 めんどうくさいのがきてしまった、と美月はため息をつく。しかし、相手には目もくれず通り過ぎると、相手もついてこなかった。

 こういうことは慣れっこだ。特に今日はじゅんも店に出ているから、いわば『共働き』の状態だ。店は夜までやることも多いので、子供たちだけで料理をすることも多い。だから、では何もおかしくないし、そうでないと、無意味におなかかせて待つのがもつたいない。

 家に帰れば、シフトを終えるはずのようすけにも頼んでハンバーグ作りだ。自分たち好みの料理を作るのは楽しい。そう思っているから、買い出しだって楽しいのだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る