『創と特別なコーヒー』

 ひとしきり盛り上がったあと、きつてんのカウンターに並ぶ子供たち。そうもそのとなりすわる。

「いつものブレンドでいいか?」

「……はい」

 いつもブラックコーヒーを飲むそうは、たいてい決まったブレンドをたのむ。好みのブレンドが決まるまでに、こだわりの強いそうには少し長い時間がかかったが。

 そんなそうに『わがままが過ぎる。この豆も安くないんだぞ』と、はつには苦笑いされているが、『その分はらいます』と引き下がらなかったため、裏メニューというあつかいで、常連向けに毎日限定数はいが提供されている。

「ほんとそうがいると助かる、よね!」

「うん、すごくげきになる」

「オレだけの外なんだけど」

「……どうも」

 たよられること自体は悪い気はしない。ただ、一人もくもくとやるのが好きなそうにとっては、『自分も楽しい時間か』という基準もある。好きなものへの知識があることを、はつから聞いた美月がたのんできたのが、不定期なこの集まりのきっかけだった。

 いつもゲンコツが飛んでくる相手に、とようすけも不満げだったが、はつうながされてそうが集めた資料に目をかがやかせたことから、美月を交えてはなむようになった。そこに京子も、そうの和服に興味を示して加わった。

 そうして続いているこの関係を、そうは、自分のためのコーヒーの香りと共に確かめるのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る