『陽介と執事』

「というわけで、スチームパンク風!」

 小道具を作り、しようくすのき全員分に加え、しぶしぶ付き合ってくれたそうと、その姉の優樹、また優樹の紹介で知り合った花火の採寸でいそがしかった。ツテではいこうじようでのさつえい許可をもらい、さつえいは順調に進む。

 しようを制作した美月にとってはあくまでしゆとしての制作だが、店のシフトに入らなくてもまかないを食べさせてもらう権利を得たので満足しているようだ。

「じゃ、08番のさつえいだよー」

「はぁい」

「かしこまりました」

 まどぎわたたずむ貴族のむすめ役のようすけに、しつ役のじゅんひざまずく構図。元々当て役としてられているとはいえ、様になっている父親の姿に、ようすけの声もはずむ。

 じゅんにエスコートされ、まどぎわに立つようすけ。一歩引いてひざまずじゅんもそうだが、美月がカメラを構えたしゆんかんようすけまとう空気も変わる。

「コホン……では。『おじようさま。この命に代えても、お守りします』」

「『……ええ』」

 ピンと張りつめた空気に、外からトラックのクラクションが混ざっても、シャッターの音がれるまではゆるむことはない。

「うん、オッケー!」

「……はああ、クラクションうるさーい!」

「それでも、ようすけさんのりんとした表情、良かったですよ」

「うふふ、ありがとー」

 わりで待機用のテーブルに向かったじゅんは、そこにあった、空の紙コップを片づけていく。それをながめていると、花火がとんとんとかたたたいた。

ようすけちゃーん。ほんと、じゅんさんめっちゃプロのしつじゃん」

「でしょでしょ? 前世も絶対しつだったってば」

 にひひ、と共に笑うようすけと花火だった。

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