『陽介と衣装デザイナー』

「ただいまー」

「お、美月おかえりー」

 美大に通いながら、小さいアトリエを持って、家と行き来している美月。ようすけふたの弟だが、兄とはちがって、童顔で女の子っぽく見えても、本人は男らしくいたいという。

 一応、スポーツジムにも通って食事も多めにっているものの、相変わらず細身のままでなげくのが美月だ。

「なんか手伝う?」

「すまない、今ちょうど皿洗いが終わったところだ」

「まじかー」

 ようすけから見ても整った顔立ちなので、「男装している女」でさつえいしようとしたら、数日間は口をいてくれなかったことがある。すがに今では反省して、美月のデザインでしようを仕立てたりもするし、それが美月の課題制作にも、卒業制作にも役立っているそうで、感謝の印として複製画を作ってもらった。

 当の美月も、自分のでなければ女物にデザインすることはあり、ようすけが喜んだデザインも多くある。

「ねえ美月」

「何?」

ようすけが、美月のすわったテーブルの向かいにすわって手を組んで、提案をする。

「またしよう合わせで何か作らない?」

 そのがおに、美月もうなずく。その表情は、父親のじゅんに似ている。

「ん、いいね。和洋中どれ?」

「ここはあえてスチームパンク!」

「あー……いいね、それ。よし、やろう!」

 デザイン案を練っていると、京子も帰ってきて、ひとしきり盛り上がったきようだいだった。

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