楠 陽介:『いいでしょう?可愛い自分になれる服旅をさせてよ気ままな旅を』

「陽介と整った身支度」

「ふんふんふん♪」

 ごげんな様子で、ようすけえをしていた。

 わいく見てもらうためのメイクもばっちりで、クローゼットをあさってはあれこれと引っ張り出して比べていた。

「んー、インナーになやんでも、お店の制服でかくれるからなあ」

 なやんだ末、最初の服に決めて、その上にしっかり整えた『フォレスタ』の制服を着る。

『お店をちがえたかと思うぞ』と母のはつには苦笑いされたが、『気合いが入るから!』とたのんで採用してもらった。

 ぱたぱたと階段を降り、フロアへと入ると。

「おっはよーございまー……うわ、そうじゃん」

「……もう、慣れたよ」

 レースをあしらったようすけの制服と対照的な、そうのシンプルな和服。

 オープンの時間はやや早いが、出勤前に飲んでいくというお客さんも少なくない。

 一方のそうは、神社の仕事のきゆうけいがてら来るという。朝のまとまった仕事がなければ、こうして遊びに来るのだ。

きゆうけい?」

「ん」

 父親同士が親友で、家族ぐるみの付き合いだが、そうがなかなか気難しくじゆうなんな考えでもないので、しばしばようすけけんしていた。そのたびにようすけにもそうにもげんこつが飛んでいたが、今ではおたがい落ち着いて、『和服のコスプレなら』とそうにも意見を求めるようになった。

『混む前に何か飲むか、ようすけ』とはつから聞かれたので、『カフェオレ!』と返した。それを横目に見ていた創がカウンターテーブルをとんとん、と叩く。

「……服、気合い入れた?」

「今日はメイクもノリよくてね」

「整ってる、服は、ぼくも好き」

「うん、そうだって和服のよれたの、気にするでしょ」

「だね」

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