「京子とカフェラテ」

「二人とも、何か飲みたいものは?」

「カフェラテ……少しいめで」

「ふつーにカフェラテ!」

びー?』とにやにやするようすけくと、はつから無言の圧力。

 大人しくなった二人の後ろをじゅんが通り過ぎ、カウンターの中へ。

「手伝います」

「じゃあ、ドリップを」

「承知しました」

 はつが手を洗ったあと、キッチンの下をのぞいて、冷蔵庫のとびらを開いたような音がした。

 何かを取り出した後、すとん、とナイフのかろやかな音。

ふ、と少し笑って、京子とようすけの前に皿が置かれた。

「苦いものには、あまいスイーツがあってこそ。フォンダンショコラならしいからな」

「わあっ」

 ようすけがキラキラと目をかがやかせ、『カフェラテまだ?』とねだると、『もう少しですよ』と返事が返ってきた。

 ほどなくして、大人な香りがただよってきた。

 温めておいたミルクを注ぐと、あわい色付きのカフェラテがソーサーの上へ置かれる。

あまさには苦さを、その逆もまた引き立つ。人間のりよくも、逆のものと合うから好きなんだ」

 いつも語る話は、はつなりの教育方針。好きなようにかざることを『それも個性だ』と言う母親を、京子は尊敬している。

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