Days.7 Parting of the day

僕は現実世界で生活することに決めた。


夢の中で偶にサーバルちゃん達が出てくるが、僕が永遠に“ジャパリパーク”へ

居ることは出来ない。


朝になったら消えてしまうのだ。


元々、僕は現実世界の人間。現実世界に居ることは不自然じゃないのに。

それを素直に受け入れられない。


けど、これが“現実”なんだ。


川場ミライという人間は、亡くなった彼のために、彼の好きだった動物の命を救うと決めたのだ。


その使命を全うする義務がある。


僕の内定が決まっていた動物病院に行く事が決まった。


僕は完全に回復したので、

車も運転出来る様になった。


今日はその入社式に向かう。

目を覚ましてから3ヶ月後の事だ。


「いってきます」


「いってらっしゃい!」


カコが笑顔で言ってくれた。




車を走らせて市内を抜けた。

国道の道を真っ直ぐ進むと踏切がある。


警告音が鳴り始めたので僕は車を停止線で止めた。


カンカンカンカン...


音が鳴る中ゆっくりと遮断機が降りている。その様子車内で見つめていた。


(...ん)


その時、運命の悪戯か、僕の目に入ったのは猫の姿だった。


1匹の猫が線路の中で蹲っている。


(あっ、危ない!)


僕は車の外に出ようとしたが、動きが止まった。


(....ここであの子を助けたら...)


もしかしたら、助けたタイミングで列車が来て自分が撥ねられるかもしれない。


けど僕が助けなかったら、あの猫は間違いなく死ぬ。


いや、奇跡的に線路と列車の間に入り助かるかもしれない。


対向車のドライバーはどうせ見て見ぬふりだろう。


僕はどうしたらいいんだ。


踏切の音がカウントダウンの様に聞こえ、焦る。


(.....)


僕は覚悟を決めた。




(ごめん、お母さん、カコ、アライさん、空香...


やっぱり、僕は...!


“大切な物”を守らなくちゃ行けないっ!

それが“佐和君との誓いだからっ...!”)


僕は車を降り、踏切の猫へと向かった。

その間、無心だった。

周りの声も、音も、全て聞こえなかった。


三毛猫を拾い上げた僕は咄嗟に踏切の外へと放り投げた。


刹那、轟音が空間を包み込んだ。

















「かばんちゃん!ねぇ、かばんちゃん!!」


「サーバル、かばんはもう...、

元の姿に戻るのですよ...」


博士の言葉を鵜呑みにしたくはなかった。


「そんな...、イヤだよ...、かばんちゃん!」


彼女の涙が、虹色の塊に滴り落ちた。


「ん...、あれ...」


「まさか...」


博士は息を飲んだ。




「かばんちゃん...、かばんちゃん!

ねぇ、私の事覚えてる!?」


「サーバルちゃん...」


「私と最初に喋ったことは...?」


「食べないでください...」


「たっ...、食べないよぉ!!」


彼女は泣きながら僕に抱き着いた。


結局、僕はここへ戻る事となった。

今度、あっちの世界に戻る事はもう無いだろう。


僕は愛した人ともに、この世界で、

永遠に生き続けられ...


いや、“生きる”っていう表現は間違っている。


もっと、旅が続けられるね。


こちらの方がしっくり来る。


というわけで、島のみんなもそうだけど...



サーバルちゃん、これからもどうかよろしくね!

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