Days.2 Aspects in common
現実世界の僕はカコとの会話で沢山の事を思い出した。
個人的に大きい衝撃であったのが
ジャパリパークは僕の高校時代の思い出の寄せ集めという事だった。
僕が事故にあったのが4月、今は12月
半年以上眠っていたにも関わらず1日で
記憶を取り戻すのは珍しいと言っていた。僕の体調面も悪くなく、1週間で家に帰れると言っていた。
足はまだ自由が利かないが、リハビリすれば治ると言う話だった。
コンコン
病室のドアが開いた。
「ミライ...、おはよう。
昨日カコから聞いたわよ。記憶が戻ったって...」
母親だった。
僕はあちらでは“かばん”と
呼ばれ続けたので、言い方に少し違和感を感じた。
「おはよう、お母さん...
あの...、心配かけて...、ごめん」
僕がそう言うと、母は笑って見せた。
「あなたの性格知ってるもの...
人一倍正義感が強かったあなたなら、
いつかやりかねないと思ってたわ...
あなたは自分の命まで投げ捨てて
小さな命を守ろうとしたんだから...」
僕も、サーバルちゃんを守ろうとした。
やっぱり、あっちでも、僕は僕だった。
「カコは?」
「今日は学校。
だけど、あなたが高校時代の事をよく覚えているって言ってたから、
卒業アルバムを持ってきたの」
母は卒業アルバムを出し、僕に手渡した。
「私もこれから仕事に行かなきゃいけないけど...、ごめんね、そばにいれなくて...」
「いや、全然、平気だよ」
「じゃあ、また来るからね」
母はそう言って、部屋を出ていった。
再び1人になった僕は、アルバムを開いた。
教職員一覧のページ
やはり目に留まったのは、樺田先生だった。
英語科の先生で、僕は彼女の授業が好きであった。どこか頼もしい所もあり、
家の事も気にかけてくれていた。
一番印象に残っていた。
無意識に手を進める。
(そうだ...、僕はB組か...)
懐かしさとパークの事が思い出された。
現実の僕と仲の良かったは意外にも、
新井さんと笛音さんだった。
新井さんは、そのまんまパークで出会ったアライさんを模写したような性格であった。
偶に一緒に帰ると、どこへ寄ろうとか、
急に決めてきて、何時も振り回されていた。
対照的に笛音さんは物静かだったけど、
物知りだった。彼女は裕福な家庭で育ち
新井さんの無茶振りにやれやれといった感じでついて来ていた。
二人ともアライさんとフェネックさんと
似た髪型をしていたのが、少しおかしかった。
たぶん、家に帰れば、3人で撮った写真の1枚や2枚、あるかもしれない。
けど、僕は1点引っかかった。
このクラスには、サーバルちゃんを連想させる様な人はいない。
AからEまでのクラスがあったが、ピンと来るものは無かった。
終盤まで行くと、それぞれの行事の際の写真があった。
1年の時の校外学習...
あっ、と思い出した。
同じ班に、
1年の時だけクラスは同じだったが、
その後も二人は僕が良く行く学校図書館でちょくちょく顔を合わせてた。
(あの二人は、博士と助手...、カレー...)
そう言えば1日目の夜はよりにもよって
カレーを作るはずだったが新井さんが
何かしでかしたんだ...。
二人はそれで呆れていた気がする。
何をしたかは忘れてわからなかった。
次に体育祭のページ見た。
そうだ。
3年の時の体育祭。
団長として名乗り出たのが
学校でイケメンと言われていた、
再び生徒一覧のページで確認する。
クラスは同じでは無かったが、
女子の中であの2人の噂で持ちきりだった時期があった。
そんな二人のファンクラブ的なものが
あるみたいな話も聞いた。
僕はそんな関心が無かったが、
あの体育祭の日、お互いが凄く良きライバルとして、また友として切磋琢磨していたのを垣間見た。
アルバムを見てると泉の如く、
昔の思い出が溢れてくる。
白黒の写真に色が付くように、その時の風景も鮮明になった。
文化祭...、新井さんと笛音さんと一緒に
楽しんだ。
後夜祭で生徒がアイドルグループみたいな...
(アイドル?あっ...!)
ページを捲って1人ずつ生徒の名を確認する。同級生のみの物だが...
ビンゴだ。
姫島さんと・・・、安芸くんが・・・
あった。
点と線が繋がった。
眼鏡を掛け、いかにも真面目そうな彼。
学校で最も可愛いと言われていた姫島さんと付き合ってるという話を聞いた。
学校というコミュニティは
すぐに噂のパンデミックが起こる。
だから、覚えている。
(あの二人、どうしてるのかな)
ジャパリパークでは、
アイドルとマネージャーの関係だった。
同級生の写真を見つめる。
本当に僕は“かばん”とうり二つだ。
「待って」
小さく独り言を呟く。
僕はなんで“動物がヒト”になった世界を
創り出したんだ?
その手掛かりのようなものが同じページにあった。
彼女とは、何度か話した事がある。
美術部にいた子だ。
「リクってさ、男みたいな名前だよね
うちの親父、市長だからさ、空よりもはるか上にのし上がって、いつかこの世をまとめる者になってほしいって思って名付けたんだってさ。バカだよね」
「いい名前だと思うよ?」
「そう言ってくれる嬉しいけどさ...
実質私は市長とか総理大臣なんかじゃなくて、絵が好きだからさ、漫画家になりたいんだけど、“やめろ”ってうるさくてね。ヤダって反抗したんだ。そしたらこっぴどく叱られてさ」
「親ってそんなものだよ。
僕だってお父さんに“進路はまだ決まらないのか”ってさ」
僕と彼女も、意外と会話が弾んだ。
「ミライって本当にいい顔してるよ」
「そう?」
「今度主人公にしてあげようかな」
「ええ...、ちょっと恥ずかしいなぁ...」
そんなやり取りを断片的に思い出した。
あれ...、僕って... 、何部だったっけ?
僕はアルバムを閉じ、ベッドの横の小さな台の上に置いた。
天井を見つめ、思い出そうとした。
だが、何故か、その部分だけハッキリと
浮かんでこなかった。
すると、唐突に扉の開く音がした。
横を見ると、そこに居たのは
「ミライ!起きてる!やった!」
やけにテンションが高い、そしてこの
子供っぽい無邪気な笑顔。
彼女は、
「あ、アライさん・・・」
「記憶戻るの早いね!スゴすぎじゃない!?ねぇねぇ!」
「が、学校は?」
「ミライの意識が戻ったってカコちゃんから聞いたからさ!自主休講ってヤツ?
まあ、単位落としても留年するだけだし!」
のだのだ言っているあっちのアライさんとは言い方は別だが、何処かにあっちのアライさんの面影を感じる。
「ま、まずいでしょ...」
「もう感激だよぉー!思い出してくれるなんてさあ!」
「病院だから静かにしないと怒られるよ...」
「あっ...、どうしよ。
さっきのテンションで廊下歩いてきたけど、ま、いいか」
「良くないよ!」
懐かしい。
僕がツッコミ役で、空香がそれにオチを付けるっていう役周りだったなぁ。
僕は現実世界の親友に思わぬ形で出会った。
そして、僕は、あの人との出会いを思わぬ形で知ることとなる。
しかし、それは少し先の事だ。
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