怒りの炸裂と物語の始まり
「はあ。どうして今思い出した」
「どしたのエリック?なんか顔色悪いけど?」
「い、いや、何でもない」
「そう?すっごい顔してるし~、今さあ、[はあ。どうして今思い出した]って、厨ニ病みたいにカッコつけながら言ってたけど?あッれ~。どうしたのかな?」
ウィルの煽りに乗りそうになったエリックだが、その挑発は、失敗に終わった。
「うっ、うるさいな‼べ、別に言ったっていいだろ‼」
エリックは、顔を赤くした。
「あ、あの~。わ、私のこと忘れてませんか?」
ガーネットが心配そうに声をかけた。だが、それを打ち消すように彼が言葉を放った。
「あ、すまん。完璧忘れてたわ」
「うぅぅ」
「ちょっとエリック‼それは酷いんじゃない?女の子にそんなこと言ったらモテないわよ」
きました。よくいる女子のいう言葉。[何々したら女の子にモテないわよ]宣言。
「しょうがないだろ‼本当に忘れてたんだから」
「う、うぅぅ」
いや、やっぱこっちの方が酷かったわ。すみませんでした。ウィルファンの皆様。
「だーかーらー。そういうこと言うからダメなのよ」
「ハイハイ分かりましたよ」
「はいは一回でいいの」
「ふふふ」
彼らは予想外の方から笑い声を聞いた。
「ど、どうしたのガーネット?」
「い、いえすみません。その、お二方は仲がとてもいいんだな~と思ったので」
「そうか~?俺には喧嘩にしか感じられないんだが」
「うっわひっどい。私は喧嘩は喧嘩でも夫婦喧嘩みたいなものだと思ってたのに」
ウィルが冗談をとばした。だが、二人はそれを本気にしてしまった。
「はあ?猫を妻にしなきゃいけないのか?」
「ウィ、ウィルさん。エリックさん。ふ、二人がそんな関係だったなんて」
「何いってんのさ。冗談に決まってるじゃないの」
「え!そ、そうだったんですか⁉わ、私てっきりご結婚されているのかと」
「おいガーネット、まず俺の歳じゃ結婚は出来ない。そしてなぜ猫と結婚していることになった‼」
エリックは物凄く、尋常ではないくらいに動揺している。
「それはともかく、どうすんのさ、この状況?」
周りを見渡すと、四人の怪しい男がエリックたちを囲むように、武器を構え、警戒していた。
(あ、そうだった。完全に忘れてた。俺たち確か......)
「さてと、やっぱ探すってなると、まずはこの街から出なきゃなあ」
「ま、それはそうね。でも、ここから出たことないから分かんないんだけどさ、外ってどうなってるの?」
ウィルは外について何も知らないようだった。
「外はなあ、すごい苦しいぞ。俺なんか一人でいったら、死にかけたからな。あ、ほらほら、こっちに向かって来る盗賊みたいな奴等にやられたんだよ」
「え!盗賊ですか⁉なら急いで逃げなければ‼」
だが時すでに遅し。彼は盗賊に殴られ、気絶した。
(さてと......。この状況どうすっかなあ。俺たち全員縄で縛られてっし、武器もなければ数も負けてる。しかもこっちは猫含め三人だからなあ。いや、待てよ。いけるかもしれない。)
「おいてめえら‼死にたくなけりゃ、金になるもん全部ここにおいてけ‼」
この中で最も背が高く、強靭な男が鼓膜が破れそうな声で言った。
「い、いや、あの~、手縛られてるんで、金も何も、動くことすら出来ないんですけど」
この時彼はミスを犯した。
(あ、待って。俺これ完璧死ぬルートじゃね?やらかしたー‼)
「アアン!?てめえふざけてんのかこの餓鬼が‼殺すぞおらあ‼」
男はエリックの胸ぐらを掴み、耳元で叫んだ。
(ああ。俺死ぬんだな。ウィルもガーネットも起きねえし、人知れず死ぬのか。悪くないかもな。これが天罰ってやつか。ホントに神っていたんだな。)
エリックがそんなことを考えていると、ふと思い出す。彼女の言葉を。
「諦めないで。どんなときでも、私は側にいるから」
(そうだ。俺は諦めない。決めたんだ。あいつのために生きるって。)
エリックの胸ぐらを掴んでいた男の側で、電気が流れる音がした。
「痺れろ‼迸れ‼スタティック・エレクトリシティー‼」
彼がそう宣告した後、ボスのような男は音なくして倒れた。
「この餓鬼が‼何しやがった‼」
周りの男たちが反応し、エリックに近付く。だが、次は怒りの雷撃が炸裂した。
「身の程知らずめ‼紫電よ集え‼スキャッタリング・ライジング‼」
最初は一つの大きな球体を成していた魔法だが、男らが近付くと、それに反応するように、紫電が飛散した。
彼らは、叫ぶ間もなく体から蒸気を上げた。
「また、やっちまったか」
これが、物語の始まりだとは、誰も予測出来なかった。彼も、彼女も、猫でさえも。そして......。
僕と歯車と賢者の石 序章 完。
僕と歯車と賢者の石 序章 @kamishiroyaiba
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